第8回部会レポート

今回は、前回示された部会報告(案)に労使の意見を踏まえて、若干文言を書き加えて、再度提出された(下線が書き加えられた部分)。

部会報告案

派遣労働者をめぐる雇用環境等の変化を踏まえた厚生労働大臣からの諮問を受け、当部会においては、政府として諮問内容が緊急課題であり、次期通常国会に労働者派遣法改正法案を提出することが必要であるという事情も踏まえつつ、限られた時間の中で計○回にわたり精力的な審議を行ってきた。
当部会としては、労働者派遣制度は、労働力の需給調整を図るための制度として、我が国の労働市場において一定の役割を果たしているという基本的な認識は変わらないが、その時々の派遣労働者をめぐる雇用環境の変化に応じて、制度の見直しを行うことは必要であると考えている。
そこで、昨今の労働者派遣制度を取り巻く現状をみるに、昨年来、我が国の雇用情勢が急激に悪化して、いわゆる「派遣切り」が多く発生しており、その中で、登録型派遣については、派遣元における雇用が不安定であり問題であるという指摘があったところである。また、特に製造業務派遣については、製造業が我が国の基幹産業であり、技能を継承していくためにも労働者が安定的に雇用されることが重要であると考えられるところ、昨年来のいわゆる「派遣切り」の場面においては派遣労働者の雇用の安定が図られず、製造業の技能の継承の観点からも問題であるとの指摘があったところである。
一方で、労働者派遣で働きたいという労働者のニーズが存在し、企業においても、グローバル競争が激化する中で、労働者派遣は必要不可欠な制度となっており、特に中小企業において労働者派遣による人材確保が一定の役割を果たしているという指摘があったところである。
こうした指摘も踏まえつつ、当部会としては、労働者派遣法について必要な改正を行うことが適当との結論に達したので、下記のとおり報告する。


Ⅰ.労働者派遣法の改正法案に盛り込むべき事項
政府が次期通常国会に労働者派遣法の改正法案を提出するに当たっては、昨年11月に第170回臨時国会に提出した法案(以下「20年法案」という。)の内容に、下記の各事項に示した内容を追加・変更した内容の法案とすることが適当である。
1 登録型派遣の原則禁止
(1)派遣労働者の雇用の安定を図るため、常用雇用以外の労働者派遣を禁止することが適当である。
(2)ただし、雇用の安定等の観点から問題が少ない以下のものについては、禁止の例外とすることが適当である。
①専門26業務
②産前産後休業・育児休業・介護休業取得者の代替要員派遣
③高齢者派遣
④紹介予定派遣
2 製造業務派遣の原則禁止
(1)昨年来、問題が多く発生した製造業務への労働者派遣については、これを禁止することが適当である。
(2)ただし、雇用の安定性が比較的高い常用雇用の労働者派遣については、禁止の例外とすることが適当である。
3 日雇派遣の原則禁止
(1)雇用管理に欠ける形態である日々又は2か月以内の期間を定めて雇用する労働者については、労働者派遣を禁止することが適当である。
(2)この場合、20年法案と同様に、日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、政令によりポジティブリズト化して認めることが適当である。
(3)なお、雇用期間のみなし規定(2か月十1日)については、就業日など、みなされた労働契約の内容が不明確である等の問題があることから、設けないこととすることが適当である。
4 均衡待遇
○派遣労働者の賃金等の待遇の確保を図るため、派遣元は、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮するものとする旨の規定を設けることが適当である。
5 マージン率の情報公開
○20年法案にあるマージン率等の情報公開に加え、派遣労働者が自己の労働条件を適切に把握するとともに、良質な派遣元事業主を選択する一助とするため、派遣元は、派遣労働者の雇入れ、派遣開始及び派遣料金改定の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示しなければならないこととすることが適当である。
6 違法派遣の場合における直接雇用の促進
(1)違法派遣の場合、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定が図られるよう、派遣先が、以下の違法派遣について違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、違法な状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設けることが適当である。
①禁止業務への派遣受入れ
②無許可・無届けの派遣元からの派遣受入れ
③派遣制限を超えての派遣受入れ
④いわゆる偽装請負(労働者派遣法の義務を免れることを目的として、労働者派遣契約を締結せずに派遣労働者を受け入れること)の場合
⑤1(登録型派遣の原則禁止)に違反して、常用雇用する労働者でない者を派遣労働者として受入れ
(2)(1)の規定の履行確保のため、通常の民事訴訟等に加え、(1)によりみなされない労働契約の申込みを派遣労働者が受諾したにもかかわらず、当該派遣労働者を就労させない派遣先に対する行政の勧告制度も設けることが適当である。
7 法律の名称・目的の変更
○法律の名称及び目的において「派遣労働者の保護」を明記することが適当である。
8 施行期日
○施行期日については、法改正の公布の日から6カ月以内の制令で定める日とすることが適当である。ただし、1(登録型派遣の原則禁止)及び2(製造業務派遣の原則禁止)については、改正法の公布の日から3年以内の政令で定める日とすることが適当である。
9 暫定措置等
(1)1(登録型派遣の原則禁止)に関しては、禁止にあたって派遣労働者等に与える影響が大きいため、その施行は段階的に行うべきであると考えられることから暫定措置として1(登録型派遣の原則禁止)の施行日から2年後までの間、比較的問題が少なく労働者のニーズもある業務への労働者派遣(具体的には政令で定めることとし、その内容については労働政策審議会で審議の上、決定)については、適用を猶予することが適当である。
(2)派遣元及び派遣先は、労働者派遣契約の解除に当たって、民法の規定による賠償等派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずるものとすることが適当である。
(3)政府は、労働者派遣事業の禁止に伴い、派遣就業ができなくなる派遣労働者の雇用の安定や企業の人材確保を支援するため、公共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業初回の充実等必要な措置を講ずるよう努めるものとすることが適当である。
その際、とりわけ中小企業においては人材確保が困難であるという指摘があったことを踏まえ、職業紹介事業が中小企業の人材確保に適したものとなるよう、特に配慮すべきである。

Ⅱ.その他の検討項目について
1 派遣先責任の強化や派遣先・派遣先労働組合への通知事項の拡大など、上記?に掲げた事項以外については、更に検討すべき問題も多数見られることから、今回の法案では措置せず、当部会において引き続き検討することが適当である。
その際、労働は派遣事業の許可・届出や派遣元責任者講習等の在り方についても、併せて当部会において検討することが適当である。
2 また、上記?に掲げた事項についても、改正法案の施行後一定期間経過後に施行の状況を見ながら検討を行い、必要に応じて見直しを行うこととすることが適当である。
見直しの検討に当たっては、当部会において、特に中小企業及び中小企業で働く労働者への影響を十分把握し、これらの実態を踏まえた検討を行うことが適当である。

使用者側 秋山委員 中小企業への配慮はありがたい。しかし、必要な時に必要な人材を確保できなくなり、中小企業は経営に大きな影響を受け、海外への移転につながることが懸念される。
労働側・小山委員 前回から中小企業は厳しいなどと言われる。今、世界的に見ても日本は格差の大きな社会になった。これは非正規労働者の増大によるものであることは様々に指摘されている。中小企業で働く労働者の労働条件を低くしてよいということにはならない。中小企業や非正規社員など、弱い者にシワ寄せがきている。社会の分配の方向を変えていくという視点が必要だ。中小企業への暫定措置は、中小企業のためにもならない。
使用者側・市川委員 中小企業への配慮はありがたい。中小企業はまとまった仕事をもらえず、正規、非正規が混在して仕事をしている。厳しいから言っているわけではなく構造的な問題がある。ちょっと違うと指摘しておきたい。
以前も指摘したが、派遣制度をうまく使ってワークライフバランスを実践している事例がある。派遣だけでなくパートでも実例ある。派遣労働者に対する福利厚生を充実させることで、派遣労働者から支持されている企業もある。今回の改正で、こうした人たちの選択肢を摘んでしまうのは残念だ。
前回小山委員も指摘したように、ブローカーのように法の目をかいくぐって営業しているような企業に対して各労働局の目が行き届いていないのではないか。きちんとできるよう支援するための予算措置も必要だ。
業界が健全に発展していくためにも幅広く、深い調査が必要だ。中小企業は派遣に依存せざるを得ないという実態がある。私が行った調査について、これまで縷々申し上げてきた。今回の部会報告(案)、登録型派遣・製造業務への派遣の原則禁止に、そうした私の調査を反映させてほしかった。私の調査で不十分であれば、厚生労働省でやってほしい。
派遣切りを行った企業を産業分類に沿って分析すべき申し上げたが、今回の部会報告(案)に反映されていない。大臣の諮問の背景は昨年来の派遣切りが背景なので、きちんとした調査が必要だ。「禁止」は国民生活に影響が大きいだけに、しっかりした調査を行い、その上で法改正を行うべきだ。
使用者側・高橋委員 原則禁止は影響が大きく、もっと時間をかけてよいのではないか。また、みなし規定もわが国ではまったく新しい制度だけに、十分に時間がほしい。もし入るのであれば、労働契約の成立を労使の合意と定めた労働契約法の特例になり、別の部会の先生方にも意見を聞く必要もあるのではないか。性急な感が否めない。
労働側・小山委員 事業停止命令などが行われた派遣元の企業名は公表されているのか。
2(2)で、常用型は「雇用の安定が比較的高い」というが、実際には簡単に契約を切られたり、社会・労働保険に加入していないなどの企業もある。やはり常用型は期間の定めがないということを前提にしなければ、安定性が確保されない。
市川委員が言われるように実態がどうなっているかは大切だ。特定派遣がどうなっているかの実態を早急に把握するとともに、事務手続きについても検討が必要だ。また、職業紹介事業の実態把握も必要だ。先日、1年以上勤務していながら、日々紹介ということで、毎日670円を紹介元に徴収され続けていたという相談があった。さらに賃金支払いまで紹介元に委託され、紹介元から賃金が支払われ続けていた。職業紹介事業についても必要な見直しをしていき、こうした脱法的な規定は明確に禁止していかないと職業の安定につながらない。
厚生労働省・鈴木課長 企業名は公表している。
職業紹介に関するご指摘のような事案の手数料については9月3日付で通達を出している。日々紹介といっても同一の紹介元から同一の紹介先に紹介されているケースだと思うが、その都度、きちんとした紹介手続きがとられていなければ、違法になるといった内容の通達だ。賃金も計算の代行はよいが支払いまで行えば、直接払いを定めた労働基準法に違反する。
職業紹介について、今のままでよいかとの指摘があったが、見直しに向けた議論を行うための開催経費を予算計上している。本来であれば、今年度中に行う予定だったができなかった。予算が認められれば、再度議論していきたい。
市川委員から指摘されたような産業分類での調査はしていない。調査は、今後のフォローアップの中でもやっていきたい。
労働側・長谷川委員 現在置かれている状況を労使は真摯に受け止めるべきだ。この1年間にテレビで放送されたドキュメンタリーを見てから、出版された本を並べて議論したほうがよいのではないか。
派遣先の責任強化については、今回の時間で議論するのは難しいことは理解するが、今後、しっかり議論してほしい。
みなし雇用については、労働派遣制度の在り方に関する研究会でもあがっていた。まったく唐突なわけではない。
今回暫定措置が設けられている。これくらいの長さもやむを得ないのかなと思う。
小山委員が指摘したように、職業紹介がいたずらに拡大されることのないようにしてほしい。
前回、市川委員から派遣元責任者講習の義務化が提案されたが、いい考えだと思う。今後、議論してほしい。26業務にはOA機器操作など、現在では専門ともいえない業務もある。検討してほしい。
今回の派遣切りでポケットの中に200円しかないという相談を受けた。そういうことのないように使用者側も取り組んでほしい。
公益側・清家部会長 労使双方がこの案を持ち帰り、今一度、議論してまとめていただきたい。調査をしていただき、資料を整備していく体制の整備は私からもお願いしたい。
さらに付したい意見があれば、後ほど事務局まで申し出ていただきたい。

[参考リンク]
>>議事録(12月25日)第142回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録(厚生労働省)

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