議員アンケート

最終更新2007年7月11日

 

非正規雇用(派遣)に関する国会議員アンケート第1次集約発表 
(5月25日現在で42名の議員から回答が寄せられました)
「日雇い派遣」の登場・格差拡大に大きな懸念
低賃金化・不安定雇用の是正に全議員が賛意

1986年に労働者派遣が、厳しい制限の下で公認されてから20年。数次にわたる規制緩和を経て、登録型を中心とする派遣労働は急速に拡大するとともに、大幅な変容をとげてきました。今、偽装請負の蔓延とともに、「日雇い派遣」「スポット派遣」と呼ばれる低賃金労働が大きな注目を浴びています。

私たち、NPO法人派遣労働ネットワークは、これまで20回にわたる派遣トラブルホットラインや派遣スタッフアンケートを実施する中で、雇用責任を負わずに労働者を活用できる「間接雇用」のシステムによって、ユーザーである派遣先がコスト削減など大きな利益をあげる一方で、その犠牲が専ら派遣労働者にしわよせされていることを明らかにしてきました。また、トラブルの具体的解決の援助や実態に基づいた政策提言活動を行ってきました。

今回6年ぶりに全国会議員を対象としたアンケートを実施して、派遣労働の課題と今後のあるべき方向についての意見を求めたところ、回答された議員の圧倒的多くから、「派遣労働者の低賃金化を是正していくべきだ」、「派遣労働者の雇用が不安定な状況を是正していくべきだ」、「派遣労働者の労働条件と派遣先正社員の労働条件について、できるかぎり均等な待遇を実現していくべきだ」、「派遣先による「事前面接」は差別・選別の温床になる」等の声が寄せられました。その内容を報告します。

5月25日現在の第1次集約では、民主党はじめ野党議員の方からの回答が中心で、与党議員からの回答はまだ僅かです。また、つい先日、政府の規制改革会議は、派遣期間の制限や派遣業種の限定などの完全撤廃方針を打ち出しており、7月の参議院選挙は今後の大きな岐路となりそうです。私たちは、中間集約を派遣ネットのホームページに公開(議員別一覧を含む)するとともに、引き続き未回答の議員に回答を求めていきます。

◇国会議員アンケートの概要◇
対象:2007年4月23日現在の国会議員全員(719名)
方法:アンケート調査票を4月25日郵送 回答はFAXでの返送を依頼
方式:選択式のアンケートと自由記入意見
回収状況:5月25日現在(郵送による依頼後1ヶ月)の中間集計
衆議院24名 参議院18名 計42名(会派別状況は下記のとおり)
自民3 民主16 公明0 共産11 社民11 国民1 無所属0

問い合わせ先 NPO派遣労働ネットワーク(中野麻美理事長)
新宿区西新宿7-22-18オフィスKビル TEL.03-5338-6250

アンケート内容と回答の集計結果

1 「日雇い派遣」などによる派遣労働の低賃金化は是正すべきだ-全議員が賛成

労働者派遣法は1986年に施行されましたが、数回にわたる法改正を経て、現在は様々な業務に「派遣」が広がっています。最近は、携帯電話やメールを利用した「スポット派遣」や「日雇い派遣」と呼ばれる低賃金派遣まで現れて、注目されています。きつい倉庫作業や引っ越し、イベントなど、9時間拘束(実際はもっと長いところも多い)で手元に残る金は7千円以下。時には、建設・港湾・警備など派遣対象業務外の違法な派遣や安全の配慮もない危険な作業がまかりとおっています。朝早くから集合をかけられるため、前の晩は近くのネットカフェやファストフード店で夜をすごす者も多く、「ネットカフェ難民」という言葉が現実味をおびてきました。

人集めの手法がかつてのトラックから携帯に変わった「現代の新・日雇い」が、労働者派遣制度を活用して広がっているのです。こうした状況を背景に、従来の「専門的」派遣業務の賃金も低下を続け、平成17年度の「一般労働者派遣事業報告集計結果」では、1時間当たりの契約料金が88円低下、時間給も111円のダウンとなりました。

Q1 派遣労働者の低賃金化を是正していくべきだとお考えになりますか?

はい 100% いいえ 0% 無回答 0%

Q2 Q1で「はい」と答えられた方にお聞きします。改善の具体的方法について、どのようなことが考えられると思われますか? (複数回答)

◇最低賃金の引き上げ 39人
◇「均等待遇原則」の立法化 39人
◇日雇い派遣の規制 34人

2 派遣労働者の雇用が不安定な状況を是正すべきだ-全議員が賛成

日本の派遣労働者の多くは「登録型」で、派遣会社に常用雇用されているスタッフは少数派です。派遣会社に登録しておいて、仕事がある期間だけ派遣会社に雇われて派遣されるので、雇用は不安定です。しかも実際には同じ派遣先で長期に働いていながら(同一派遣先で5年も10年も継続勤務している例も多い)、契約は1~3ヶ月の短期契約の更新を繰り返すという「短期細切れ契約」が横行しています。

国が定めた「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、派遣元との契約を可能な限り長く定めること、「派遣元が講ずべき措置に関する指針」では、派遣先との契約期間に労働契約期間を合わせること等が謳われていますが、あまり守られていません。

登録型の派遣労働者にとって、いつ打ち切られるかも知れない契約は大変不安です。そのため近年の国等の調査でも「できれば正社員で働きたい」とする派遣労働者が半数近くに達しています。

Q3 派遣労働者の雇用が不安定な状況を是正していくべきだとお考えになりますか?

はい 100% いいえ 0% 無回答 0%

Q4 Q3で「はい」と答えられた方にお聞きします。具体的な是正の方法について、どのようにお考えになりますか? (複数回答)

◇派遣先による直接雇用の促進 40人
◇有期雇用(細切れ雇用)の規制 39人
◇長期勤続の派遣労働者の常用型派遣への切り替え 36人

3 派遣労働者への通勤費課税は不公平だ!

一般のサラリーマンの通勤費は、基本的に非課税となっています。ところが、派遣労働者の多くは、通勤費に課税されていることをご存じでしょうか。

現在の国税庁の見解では、通勤費が給与に加算して支払われている場合には非課税として扱われるものの、通勤費が給与に含まれているとみなされると非課税の扱いにはなりません。大手の派遣会社の多くが、通勤費を別途支給の形にしておらず、東京都が行った最新の調査でも、派遣労働者のうち「通勤手当」として支給されているのは5割程度にすぎません。

派遣会社が通勤費を別途支給の形にしたがらないのは、派遣の場合、急遽契約決定・就労開始となったり、比較的短期で派遣先(就労先)が変わることがあり、通勤費(自宅から就労先まで)を事前に計算することが煩わしいためと考えられます。

ところが、こうした場合、派遣スタッフが実際に払っている通勤費を計算し、非課税の申告をしても国税当局は認めようとはしていません。「給与に加算して受ける通勤手当」でなければ非課税とならないというのが所得税法の規定なので、国税庁は「法律を変えないと無理」という見解なのです。

Q5 派遣労働者の通勤費についての現行の扱いは不公平だとお考えになりますか?

はい 95% いいえ 0% 無回答 5%

Q6 Q5で「はい」と答えられた方にお聞きします。派遣労働者の通勤費を非課税扱いとするについて、法改正以外の方法がないとしたら、所得税法を改正すべきだとお考えになりますか?

はい 86% いいえ 5% 無回答 10%

4 派遣労働者と派遣先正社員との均等待遇をできるかぎり実現すべきだ!

通勤費に限らず、派遣労働者と派遣先の正社員との間には大きな労働条件格差が存在しています。ボーナスが出る会社は少ないですし退職金制度はありません。労働条件の基本である賃金をとっても、時給に換算すれば数倍の格差があります。

例えば登録型派遣労働者の平均時間給は1315円(平成17年度労働者派遣事業報告集計結果)とされていますが、これでは年間1800時間(政府がかつて定めた年間総労働時間の目標)働いても年収が240万円(月収20万円)に達しません。最近は、派遣労働者でも正社員以上の残業をする例が珍しくなくなりました。正社員とほとんど同じ仕事をしていながら、労働条件に大きな格差が存在するのは、派遣労働者にとって納得しがたいものです。

Q7 派遣労働者の労働条件と派遣先正社員の労働条件について、できるかぎり均等な待遇を実現していくべきだとお考えになりますか?

はい 95% いいえ 0% 無回答 5%

5 派遣先による「事前面接禁止徹底」―賛成は86%

現行の労働者派遣法では、雇用者でない派遣先が、受け入れる派遣労働者を特定することはできません。特定することを目的とする行為である、受入決定前の事前面接や履歴書の派遣先への送付を禁止しています。

ところが、現実には「事前打ち合わせ」「事前訪問」「職場見学」「業務確認」などの名称で、年齢や、容姿、家族構成などを勘案した実質採用類似行為が行われています。極端な場合には受け入れ予定数より多くのスタッフを呼び寄せて選抜したり、派遣会社数社のスタッフを競合させることさえ行われています。

派遣ネットが実施した「派遣スタッフアンケート2006」によれば、事前面接が禁止されていることを知っている派遣スタッフは36%にすぎず、68%のスタッフが「事前訪問」の希望を確認されたことはない、と答えています。しかも、派遣先の事前面接では、「プライバシーにかかわることを聞かれた」20%、「年齢を理由に断られた」13%、さらに事前面接後に「仕事が決まらなかった」経験をもつスタッフが29%も存在していました。

Q8 派遣先による「事前面接」は差別・選別の温床になるとお考えになりますか?

はい 90% いいえ 2% 無回答 7%

Q9 「事前面接」禁止を徹底すべきだとお考えになりますか?

はい 86% いいえ 5% 無回答 10%