第6回部会レポート

今回は、公益側委員が作成した「部会報告に向けて公益委員案骨子」が示され、これをもとに議論が行われました。
以下では、部会でのやり取りの要旨をレポートする。

公益側・清家部会長 前回、来年の通常国会に改正法案を提出するということをお願いした。まだ、多くで労使の意見の一致が見られていないため、事務局とはかって今回公益委員案骨子をまとめた。
(厚生労働省担当者が公益委員案骨子を読み上げる)

部会報告に向けての公益委員案骨子

Ⅰ.法案を提出するに当たっての当部会としての考え方
派遣労働者をめぐる雇用環境等の変化を踏まえた厚生労働大臣からの諮問を受け、当部会においては、政府として諮問内容が緊急課題であり、次期通常国会に労働者派遣法改正法案を提出することが必要であるという事情も踏まえつつ、限られた時間の中で計○回にわたり精力的な審義を行ってきた。
その結果、当部会としては、昨年11月に第170回臨時国会に提出した法案(以下「20年法案」という。)の内容に、下記の各事項に示した内容を追加・変更した内容の法案とすることが適当であると考える。
1 登録型派遣の原則禁止
(1)常用雇用以外の労働者派遣を禁止する。
(2)禁止の例外として、以下のものを設定する。
①専門26業務
②産前産後休業・育児休業・介護休業取得者の代替要員派遣
③高齢者派遣
④紹介予定派遣
2 製造業務派遣の原則禁止
(1)製造業務への労働者派遣を禁止する。
(2)禁止の例外として、以下のものを設定する。
○常用雇用の労働者派遣
3 日雇派遣の原則禁止
(1)日々又は2か月以内の期間を定めて雇用する労働者について、労働者派遣を行ってはならないこととする。
(2)20年法案のとおり禁止の例外を設ける。
(3)雇用期間のみなし規定(2か月十1日)は設けない。
4 均衡待遇
○ 派遣元は、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮するものとする旨の規定を設ける。
5 マージン率の情報公開
○ 20年法案にあるマージン等の情報公開に加え、派遣元は、派遣労働者の雇入れ、派遣開始及び派遣料金改定の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示しなければならないこととする。
6 違法派遣の場合における直接雇用の促進
(1)以下の違法派遣の場合に、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす旨の規定を設ける。
①禁止業務への派遣受入れ
②無許可・無届の派遣元からの派遣受入れ
③期間制限を超えての派遣受入れ
④いわゆる偽装請負の場合
⑤常時雇用する労働者でない者を派遣労働者として受入れ
(2)(1)によりみなされた労働契約の申込みを派遣労働者が受諾したにもかかわらず、当該派遣労働者を就労させない派遣先に対する行政の勧告制度を設ける。
7 法律の名称・目的の変更
○ 法律の名称及び目的において「派遣労働者の保護」を明記する。
8 施行期日
○ 施行期日については、公布の日から6か月以内の政令で定める日とする。ただし、1・2については、公布の日から3年以内の政令で定める日とする。

Ⅱ.その他の検討項目について
上記Ⅰに掲げた事項以外については、今回の法案では措置せず、引き続き検討することが適当である。
また、上記Ⅰについても、改正法案の施行後一定期間経過後に施行の状況を見ながら検討を行い、必要に応じて見直しを行うこととすべきである。

公益側・清家部会長 派遣労働はわが国で一定の役割を担ってきたと認識している。しかし昨年来の派遣切りで、雇用の不安定化が明らかになった。製造業は日本の基幹産業であり、使用者側・市川委員から禁止すべきでないとの意見も出されたが、技能継承の観点などから原則として禁止することもやむを得ないと考えた。
また、雇用が不安定だった登録型派遣についても原則禁止としたが、一定の措置について段階的な施行とすることなどについても議論してほしい。
使用者側・秋山委員 この部会を通じて、労使が歩み寄って法案をまとめていきたい。しかし登録型派遣と製造業への派遣の原則禁止は企業経営に対する影響が大きい。大企業だけが生き残ればいいと考えているわけではないと思うが、中小企業に対する配慮がほしい。
使用者側・市川委員 製造業については、これまで専門業務以外を禁止するとしていたが、常用型は認めるとしており評価している。しかし、製造業で働く約80万人の派遣労働者のうち、登録型派遣は約44万人だ。この約44万人については「派遣切り法案」になっている。正社員よりも派遣労働者がいいという声なき声がメディアでも取り上げられるようになってきた。私たちはこうした声なき声を反映して議論をしなければならない。
職業紹介で可能だとしているが、中小企業は社長が面接しており、1人について10分の面接をしたとすれば10人で100分とられる。とてもできない。
この内容では、派遣労働者が減少することになる。そうなれば、大企業に優先して派遣するようになり、中小企業では派遣を活用できないといった状況も懸念される。
この部会は厚生労働大臣の諮問により開始したが、それは派遣切り、派遣村が端緒だ。製造業以外で派遣切りはそれほど問題になっていない。製造業への派遣の禁止を盛り込んだ報告の作成は、諮問に反するのではないか。
常用であれば製造業への派遣も可能としているが、そうであれば「製造業務への派遣の原則禁止」はいう必要はないのではないか。また、製造業務への派遣の原則禁止がILO181号条約に反しないかも検討すべきだ。
施行期日は3年以内としているが、3年で景気が回復する保証はない。登録型派遣の原則禁止は今やるべきか、継続とすべきではないのか。
高齢者の派遣は認めているが、定年退職後に派遣で技術指導で製造現場に入る人もいる。製造業がないのは、まったく理解できない。主婦・学生などフルタイムではなく派遣で働きたいという人も多い。こうした人に対応するためワーク・ライフ・バランス例外条項を設けるべきだ。
日雇い派遣については、禁止しても短期の職業紹介で対応できると前回の議論からいっていたが、可能かどうかまったく不明だ。スムーズに移行できるか検証してほしい。
前回私が示した「パッケージ案」がまったく反映されておらず、甚だ遺憾だ。「派遣契約を中途解除した派遣先企業についてのルールの明確化」(悪質な違反者は派遣受入禁止)、「派遣元責任者講習の国家試験化」(悪質な違反者は免許取消し)、「派遣先責任者講習の義務化」など法案に盛り込んでほしい。
私は、現政権の中小企業政策はまったくなっていないと怒りを感じている。もう、中小企業をいじめるようなことはしないでほしい。
厚生労働省・鈴木課長 大臣の諮問に反するのではないかとの発言があったが、登録型の原則禁止は三党案、三党合意にあり、諮問の範囲にあると考える。
現在も建設業や港湾運送業などについて派遣を禁止しているが、製造業もこれと同様の整理をし、そのうえで例外として常用の場合にのみ認めるという仕組みにする。施行期日について、なぜ3年にしたのかは景気の回復を見込んだものではなく、公布の日から現行の派遣に基づいて派遣した場合でも3年が上限になるからで、雇用の安定を考えた。
使用者側・市川委員 製造業を派遣禁止業務に位置付けるのであれば、改めてそれに反対する。「3年」については景気の動向を踏まえてほしいという趣旨だ。
使用者側・高橋委員 公益委員の骨子案の取りまとめに敬意を表する。しかし、一時的な需給調整に派遣は有効だ。企業、労働者のニーズも高い。施行日は「3年」にとらわれずに検討してほしい。
原則として登録型派遣を禁止すると常用型のみになるが、常用型・特定派遣は届出制だ。これをどう考えるか。
日雇い派遣の禁止の例外については20年法案通りと考えてよいか。
均等待遇については、労働契約法と同様の書きぶりだ。派遣法に書き込むことの効果はどういうものか。
派遣料金は、いろいろな経緯をもって決定される。マージン率の公開は無用の混乱を招くことになるのではないか。また、企業秘密との関係、個人情報との関係をどう考えるか。
みなし雇用については、採用の自由を侵害するのではないか。もし、仮にやるのであれば、違法に対する予見可能性を考慮すべきだ。これまでも26業務のつもりだったがたまたま外れてしまい、雇用の申し込みをすることになったケースもある。偽装請負は極めてあいまいだ。行政として判断のためのQ&Aを作成するなどを検討してほしい。違法の場合、派遣元にも責任がある。派遣元が直ちに新たな派遣先を見つけることを義務付けることなども必要だ。
厚生労働省・鈴木課長 日雇い派遣の例外規定については20年法案と同じだ。均衡処遇については、法律に書き込むことでどこをどう均衡するのか、より具体的になると考えている。マージン率については、その労働者のマージンの公開を求めるものなので、企業秘密や個人情報には当たらないと考える。また、社会・労働保険料についても説明するようにすることが考えられる。
みなし規定は、派遣先が違法を知りつつ行っている場合のペナルティとして設けるもので、派遣先が有責の場合なので採用の自由を侵さないと考える。偽装請負については、指針やQ&Aで明確にしていく。
公益側・鎌田委員 公序良俗に反しない範囲で採用の自由は認められているので、問題ない。すべての派遣労働者を対象とするわけではなく、合意を一定の法政策のもとで認めるのであれば可能だ。違法によって派遣労働者の雇用の安定を損なうことが問題。保護される者のリスクを考えるべきだ。
使用者側・秋山委員 登録型派遣が禁止されれば、一般事務で派遣されている人たちはどうなるのか。登録型派遣は、育児・家事などの責任を負っている女性に都合のよい働き方だ。原則禁止とすべきでない。
労働側・小山委員 労使の意見に隔たりが大きい中、まとめていただいた公益委員に敬意を表する。そもそも派遣とはどういうものか。指揮命令者が責任を負わないシステムが問題で、物の製造の業務以外に問題がないわけではない。
物の製造の業務に派遣が認められるようになったのはここ4~5年だ。中小企業が苦しいのはわかるが、どこに問題があるのかを見ていくべきだ。働いている人にシワ寄せするのは違うだろう。無理な発注に問題があるなら、公正な取引を実現するようにすべきで、その意味では労働組合も経営側と共闘できる。
中小企業は日本の多数派。例外はよくない。
労働側・長谷川委員 大臣の諮問は「我が国の雇用情勢は急激に悪化し、いわゆる派遣切りが多く発生し、社会問題化するなど、派遣労働者をめぐる雇用環境に大きな変化が生じたところである。このため、上記の法律案において措置することとしていた事項のほか、製造業務への派遣や登録型派遣の今後の在り方、違法派遣の場合の派遣先との雇用契約の成立促進等、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進のために追加的に措置すべき事項についても検討を行い、改めて法律案を提出する必要が生じている。」としており、諮問に反するものではないと考える。
派遣は派遣切り、派遣村から問題になったわけではなく、以前から問題はあった。登録型派遣は禁止すべきだ。製造業の派遣切りも去年の春くらいからあった。製造業務への派遣も禁止すべきだ。
もっぱら派遣・グループ派遣については、これまでと同様と考えてよいか。均衡処遇については、だれとどう均衡を図るのか明確にすべき。
前回の論点で出されていたが、今回出されていない項目がある。
今回の骨子案には、論点にあった派遣先労働組合への通知義務がないほか、派遣先の責任強化についてひとつも触れていない。一部検討が必要なことは理解するが、もっとも関心のあった派遣先の団交応諾義務についてももれている。
みなし規定については、これで検討しようと思う。派遣先に対する規制は罰金の引き上げか、みなし規定の創設以外にないだろう。
労働契約は契約を失うと雇用を喪失することが問題であり雇用関係の特徴だ。
施行期日はすべての項目で「6か月以内の政令で定める日」とするよう検討してほしい。
派遣制度については、課題も多く一気に改正できない。残された課題について引き続き検討していくことが必要だろう。
厚生労働省・鈴木課長 派遣先の責任強化については、検討すべきではないということではなく、今回は時間の関係から無理だということだ。例えば団交応諾義務などは労組法との整合性を考えなければならないなど、他の法令度の整合性を取る必要がある。
もっぱら派遣・グループ派遣については20年法案通りだ。
使用者側・市川委員 派遣元・派遣先がルールを守っていないことが問題だ。だからこそ、責任者講習の義務付を訴えた。中小企業は派遣労働者も家族と同様に扱っている。私の言っている中小企業は従業員数10人程度の会社だ。今は、サプライチェーンなど社会の運用の仕方が変わっている。派遣が解禁される前の4~5年前とは違う。
使用者側・高橋委員 みなし規定はいつ・どのような条件で申し込んだとみなすのか。
厚生労働省・鈴木課長 派遣先と同じ内容で、違法が行われた時点からだ。
使用者側・高橋委員 受け入れ当初から違法が行われている場合もあるがその場合は、当初からになるのか。
厚生労働省・鈴木課長 当初からになる。
労働側・長谷川委員 行政勧告がみなしの前置になることはないか。民事効は?
厚生労働省・鈴木課長 前置ではない。民事効はある。違法があった時点で、派遣先の雇用申し込みがあったとみなし、労働者がそれを受諾した段階で雇用関係が成立したとみなす。このため、1年の契約で半年後にみなし規定により派遣先に雇用された場合は、派遣先には1年の契約で雇用されたとみなすことになる。
使用者側・高橋委員 みなしは派遣先へのペナルティということだが、派遣労働者の雇用の安定ということでいえば、派遣元に次の派遣先の紹介を義務付けるなども考えられる。なぜ、みなしなのか説明してほしい。
公益側・清家部会長 登録型派遣・製造業務への派遣の原則禁止、派遣先へのみなし雇用規定には、依然として使用者側が反対しているが、3者構成のこの場でまとめたい。

次回は12月22日(火)午前8時から予定している。

[参考資料]⇒部会報告に向けての公益委員案骨子(厚生労働省)(20091218.pdf 52KB)

[参考リンク]
>>議事録(12月18日)第140回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録(厚生労働省)

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