第5回部会レポート

今回は前回十分な議論ができなかった「9.罰則」「10.法律の名称、施行時期のその他の事項」から、議論が始められた。

9.罰則 10.法律の名称、施行時期その他の事項
労働側・古市委員 名称にはこだわらなくてもよいのではないかとの意見もあるが「名は体を表す」。「労働者保護」を入れてほしい。
使用者側・市川委員 この点に限らず、10の項目はすべて昨年の研究会報告で網羅されている。私はすべての内容について研究会報告と20年の閣法を支持する。労使で議論して出したぎりぎりの結論だ。
使用者側・秋山委員 罰則強化は支持するが、他の法律とのバランスを考慮すべき。
労働側・小山委員 そもそも今回の大臣の諮問は、昨年のリーマンショックによる影響で労働者の生存権すら危うくするような事態を招いたことによる。その観点を踏まえるべき。
使用者側・高橋委員 「名は体を表す」のであれば、まず名称ありきではないはず。内容の検討の結果であることが必要。
労働側・長谷川委員 労働者側から見れば罰則は厳しいほうがいいが、「みなし規定」とも関連してくる。最終的に名称と目的を考えるので良いのではないか。施行期日も、全体的な出来上がり具合を見てということになるのではないか。
公益・清家委員 前回、使用者側・高橋委員から、労使の意見の隔たりが大きい部分について整理してほしい旨の要望があった。公益委員で作成したので、これをもとに議論をしてほしい。
[資料1]⇒部会においてこれまでに出された意見を踏まえた論点案(20091126-1.pdf 88KB)

公益・鎌田委員 これまで、登録型派遣の原則禁止は憲法やILO条約に違反するのではないかとの指摘があった。しかし、派遣はもともと禁止されていたものなので、原則禁止が憲法などに違反することにはならない。
公益・柴田委員 施行期日について議論すべき。施行期日は、マニフェストではどうなっているのか、事業規模などによって段階的に施行することは可能か、について事務局に伺いたい。
通常の労働者よりも弱い立場にある、エンプロイアビリティの低い労働者については禁止が必要だろう。禁止の例外も考えるべき。雇用調整のプラス面も考慮すべきだろう。多様な働き方を実現するというプラス面、労働者のニーズもある。しかし、長期間派遣で働けば労働者保護の問題もある。強くてニーズのある業務について認めることも考えられる。
厚生労働省・鈴木課長 三党案では、公布の日から3年を超えない範囲で政令で定めるとしている。これまで製造業派遣も段階的に解禁してきたし、労働時間規制も段階的に1週40時間を実現してきた。段階的な施行は可能だと考える。
労働側・小山委員 前回は日雇い派遣が問題になったので、登録型派遣については、議論が不十分だったのではないか。そもそも派遣とは何か。派遣契約と雇用期間が等しくなり、もっと働きたいと考えても働けなくなることがある。
中小企業は大変だというのはわかるが、ここでの議論は派遣労働者の保護、権利の問題で規模を例外にするべきではない。
労働側・古市委員 労働者保護がなおざりだったことで議論が始まったはず。そしてそれは、中小企業に多かった。中小企業を例外にすれば、劣悪な労働条件を例外とすることになりかねず反対だ。
使用者側・秋山委員 事務派遣には問題はないと考える。一般事務で働いている派遣労働者が行き場を失う。すぐに人員を確保できなくなるのは、中小企業にとっては死活問題だ。派遣を選んで働いている人もいる。原則禁止には反対。
使用者側・高橋委員 派遣切りの表記は『いわゆる「派遣切り」』としてほしい。製造業派遣以外で、製造業で起きたようなことが問題になったのか。派遣期間と雇用期間の一致の問題は、そもそも論になる。登録型派遣は就労形態の選択肢のひとつ。それを閉じることは乱暴な議論だ。私は登録型派遣は優れた制度だと思っているが、同時に問題があるとも思っている。メリットを活かしながらデメリットを直していくことが望ましいのではないか。派遣は、短期・短時間の就労へのニーズに対応できる。スキルアップについて、業界団体が職業訓練を担っていくことも考えられる。
労働側・長谷川委員 前回の法改正の議論ではフォローアップをやった。そこに日雇い派遣の問題が出てきたので、優先的に行った。そのときから、登録型派遣についても議論すべきとの意見は述べてきた。昨年秋はだれも予想できないスピードで雇用調整が進んだ。私はそのときも登録型派遣について議論すべきだと意見を述べている。派遣労働は多くの問題をはらんでいる。製造業派遣だけが問題なのではない。派遣労働は不安定で先の見通しが立たないと派遣労働者がいっている。
製造業派遣について「諸外国においては認められている形態であり、禁止することは適当でない」との記載があるが、諸外国は正社員への登竜門として派遣を活用しているのであって、日本とは違う。その議論をするのであれば、均等待遇についても実現が必要だ。日本では、派遣労働者はずっと派遣のままになってしまう。登録型派遣の原則禁止を掲げた民主党が選挙で圧勝し、政権が交代した。登録型派遣の原則禁止は、社会に要請されていると考える。
事務局にお聞きしたい。登録型派遣のところに「臨時的・一時的な労働力の需給調整という派遣の目的にかんがみ、育児休業等の代替要員派遣以外にも、「一定の利用目的による派遣」を例外とすべきか」、「昨年来のいわゆる「派遣切り」が問題の端緒であるならば、そこでの問題が少なく、労働者のニーズもある派遣を例外とすべきか」とある。この「一定の利用目的」「ニーズ」とあるが、どういうことを想定しているのか。
厚生労働省・鈴木課長 「一定の目的」とは、夏季休暇の代替要員などフランスのような方法もあるのではないかということ。「ニーズ」は、通常、直接雇用であるものもあるが、派遣の場合は残業を断れる、契約以外の業務を断れるなどがあると聞いている。
労働側・長谷川委員 今の説明では、すべての業種が入ることになるのか。
厚生労働省・鈴木課長 たしかに入る。例外を考える上での議論の素材として提供した。
労働側・長谷川委員 限りなく広がる可能性があり、問題だ。
使用者側・市川委員 派遣労働者にスキルを磨いて、正社員にチャレンジしてほしいと考えている。労働力調査から、約20万人が派遣労働者から正社員になっていることがわかる。ゼロではない。昨年秋の不況では派遣労働者だけでなく、正社員も影響を受けた。まさに100年に1度のことだ。マニフェストには「子ども手当」「高速道路の無料化」などいろいろな項目がある。登録型派遣禁止に国民の支持があると考えるのは早計ではないか。
年末までに…との意見があるが審議の時間は不十分でお尻を切った形は問題だ。
使用者側・秋山委員 早急に結論を出すべきではない。
使用者側・高橋委員 いっさい、派遣労働者が正社員になっていないわけではない。労働力調査で見れば、約20万人が派遣から正社員になっている。紹介予定派遣もある。登録型派遣について、長谷川さんのイメージは、意に反して長期で長時間働いている氷河期世代…という印象がある。多様な人たちを考慮して制度設計をすべきだ。
労働側・長谷川委員 これまで部会で行ってきたヒアリング、連合の各地方組織に持ち込まれる相談、労働審判や都道府県労働委員会、都道府県労働局に持ち込まれる問題から労働者像を見るのは当然だろう。登録型と製造業派遣の問題は一体のもの。改正は必要だ。引用されている労働力調査のデータは、いわゆる2009年問題の影響ではいか。
雇用形態の多様化を否定するつもりはない。短期・短時間働きたいというニーズがあるのは理解する。しかし、雇用の基本は無期・直接雇用だろう。
公益・鎌田委員 製造業は、派遣切り、労災の多発など問題が多い。三党案のように高度熟練の専門業務について議論していくことは必要だ。
公益・柴田委員 段階的な施行について、労働側委員に一蹴されてしまったが、人員の確保ができず、業が立ち行かなくなるのでは困る。
熟練した技術を持った強い労働者でひどい目にあわないというのであれば、例外としてよいのではないか。
事務局に伺いたい。製造業の国家資格や業界団体の資格はどのようなイメージか。
厚生労働省・鈴木課長 ボイラー技士など有していないと業務ができないような資格が考えられるのではないか。「技能検定制度」の中にも製造業に関するものがある。業界団体や民間の検定も考えられる。
使用者側・市川委員 派遣切り、派遣村のような事態が起きないように…という点では認識が一致しているが、登録型派遣と製造業務への派遣の原則禁止は、問題の解決にならない。専門業務で切ると、中小企業では派遣は使えなくなる。
どうすればいいのか。資料を提出させていただいた。
[資料2]⇒製造派遣適正化パッケージ(案)(20091126-2.pdf 36KB)

派遣契約を打ち切る場合のルールを明確にすべき。また、派遣元責任者講習を国会資格にし、悪質な違反については免許を取り消す。現在、日本では派遣会社が7~8万社あるが、諸外国に比べて多すぎる。しかし、法律を守らなかった企業の影響で、法律を守っていた企業が影響を受けるのでは空爆における誤爆のようだ。交通事故が多発しているからといって自動車を禁止するということにはならないはずだ。
「派遣先責任者講習」も現在は参加が任意だが、義務化することが必要だろう。
競争入札で賃金のダンピングが進むことも問題なので「派遣業者団体による業界自主規制の強化・支援」していくことも必要だ。
中小企業は、現在、仕事がなくて困っている。景気の回復で派遣をめぐる状況は変わってくるのではないか。「景気対策」を進めてほしい。
労働側・小山委員 物の製造の業務に派遣が解禁される前は、派遣なしで労働力を確保してきた。できないはずはない。
「常用」の定義が問題になるが、一般的には期間の定めはないと考えるべきだろう。
使用者側・市川委員 かつてと現在とでは状況が違う。かつては3カ月前に製造計画が知らされて、それに基づいて人員を確保していた。現在は、在庫を持たないジャストインタイム、サプライチェーンが日本では当たり前になっており、派遣なくして考えられない。 使用者側・秋山委員 登録型派遣の禁止で、現在、登録型で働いている約40人の雇用の安定は図られると考えているのか。
労働側・小山委員 私の周囲の製造業では、派遣労働者ないなくなっている。仕事があれば失業が増えることはない。今日決めて明日廃止ということでは、影響も出るだろうが、そうではない。一定の猶予期間を設ければ対応できるだろう。
使用者側・市川委員 製造業に派遣労働者がいなくなったということはない。
厚生労働省・鈴木課長 製造業の派遣労働者のピーク時は約56万人。そこから約6割減といわれているので、現在は20万~30万人と推計する。
労働側・長谷川委員 秋山委員に頭の体操をしてほしい。仕事があったときに、それを無期雇用の正社員がやるか、有期雇用がやるか、派遣がやるかの違いだけ。派遣がなくなっても仕事がなくなるわけではない。
使用者側・秋山委員 派遣先に派遣労働者を直接雇い入れる余裕がないのではないかということだ。
労働側・長谷川委員 09年問題のときも労使で考えて工夫して雇い入れた。日本の労使で知恵を出し合えば軟着陸できると考えている。
使用者側・市川委員 受注量の変動が激しいため必要とする労働力のギャップが激しく、確保が難しい。中小企業は知名度がなく、人が集まらないが、派遣会社に頼めば、迅速に対応をしてくれる。
使用者側・高橋委員 雇用不安定は、昨年秋のリーマンショック以前から問題だったのか。「ものづくりの現場力」とあるが、「現場力」は国内に生産拠点を持つことが必要。製造現場が国内に回帰している中で、製造業への派遣を原則禁止してしまうと、海外への流出を後押しするひとつの要因になるのではないか。
労働側・長谷川委員 罰則の強化よりも「みなし雇用」を適用したほうがいいと考えている。事務局に伺いたいが「みなし雇用」の民事効は損害賠償しかないのではないか。示されている項目のいくつかについて説明してほしい。
厚生労働省・鈴木課長 まず「派遣先・派遣労働者間の雇用関係の成立そのものをみなす」については、違法があった瞬間に労使の意見は介在せずに雇用関係の成立をみなすもの。「派遣労働者の通告により、派遣元から派遣先への雇用関係の移転をみなす」は派遣元から派遣先への契約の移転。このため、例えば6カ月契約で3カ月働いていたような場合は、残り3カ月の契約がそのまま移転することになる。「派遣先に労働契約申込み義務を課す(民事効あり→派遣労働者が裁判で争うことも可)」は、派遣先の申し込みがあり、それを受諾して契約が成立する。この場合の民事効は損害賠償だけでなく、地位確認ではないが申し込みの履行を求める「履行請求」を行うことができる。
公益・鎌田委員 たしかに履行請求は地位確認ではない。しかし、判決において、申し込みの意思表示をしたものとみなすことも考えられる。
使用者側・高橋委員 違法な状態だからといって、採用の自由など憲法で保障されている権利を無視していいのか。違法は派遣先だけの問題ではなく、派遣元も相当程度問題がある。違法をただす必要があるのであれば、罰則を適用して、派遣労働者に適正な就労先を確保することがよいのではないか。
労働側・長谷川委員 一定の違法があった場合にみなしを適用するということ。普通ではないときにみなしが適用される。いつ、どのような内容が派遣先に移転するのか、議論する必要がある。
「派遣先・派遣労働者間の雇用関係の成立そのものをみなす」で対応してほしい。
公益・清家委員 来年の通常国会に改正法案を提出するという政治的な要請がある。年末までの取りまとめに向けて議論してほしい。

次回も引き続き「部会においてこれまで出された意見を踏まえた論点案」をもとに議論をすることになった。

[参考資料]⇒常用・常用以外、業務別派遣労働者数の内訳(H20.6.1現在)(20091126-3.pdf 20KB)
[参考資料]⇒他法令における罰則について(20091126-4.pdf 52KB)
[参考資料]⇒部会においてこれまで出された意見を踏まえた論点案(20091126-5.pdf 100KB)
[参考資料]⇒平成20年度労働者派遣事業報告の集計結果について(速報版)(20091126-6.pdf 292KB)

[参考リンク]
>>議事録(11月26日)(厚生労働省)

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