第1回部会レポート

冒頭に、労働者派遣について担当する厚生労働省職業安定局需給調整課の鈴木課長よりこれまでの経過、この日配布された労働者派遣法改正の三党案などの資料について説明があり、その後、部会長の清家氏が議論を進めた(このため、この日の議論でも三党案についての質問などがあった)。
なお、この日は、使用者側・秋山委員が欠席、代理として佐藤委員が出席。労働側・市川委員が欠席、代理として小山委員が出席。

公益・清家委員 議論を進めるに当たって部会長としてお願いがある。昨年、時間をかけてこの部会で答申を行った。新たに議論を行うにしても、それを尊重してほしい。昨年の法案にどれを追加するか、昨年の法案をベースに考えてほしい。
労働側・長谷川委員 議論をするにはいい時期だ。政府案の提出後に、何が起きたのか労使で真摯に議論したい。規制緩和によって改正されてきたが、多くの問題が顕在化したのではないか。
派遣の問題が社会問題化したが、この背景として①「多様な働き方」ということで、結果的に若年者を中心に派遣に誘導した結果、格差の拡大を招いた、②非正規労働者のセーフティネットが不十分であったことが明らかになった、③使用者責任が曖昧になっていた、④能力開発が不十分でスキルアップにつながっていない、などの問題が指摘できるのではないか。
今こそ、持続可能な働き方、安心して働ける、信頼感が醸成できる職場政策、今後の人事労務政策について考えたい。
使用者側・市川委員 前回の職業安定分科会で公益委員から大変重い視点が提供された。製造業への派遣を原則禁止することで、育児などによりフルタイムで働けない人たちの勤労権、職業選択の自由を侵害するのではないか。当部会でも、こうしたことを踏まえて議論してほしい。
国際的に製造業への派遣を禁止している国はない。ILO条約との整合性をどうとっていくのか。また、禁止すれば正社員になれるという議論には飛躍がある。正社員と派遣労働者では期待する資質が違う。 現在、有効求人倍率は過去最低の水準となっている。この時期に議論することが適当か。禁止されたらどうなるのか。
例えば、クリスマスケーキの製造のように一時的な需要に応じて大量に人を募集する場合、知名度のない中小企業では人が集まらない。また最近では、インフルエンザワクチンの製造に必要な有精卵の製造現場(目視検査)でも派遣労働者が活躍している。デジカメやケータイなどライフサイクルが短く、派遣でないと対応できない。
製造業でも専門分野の派遣は可能とするとのことだが、中小企業で派遣が多く活用されているのは、いわゆるバリ取りや梱包などなので、派遣が使えなくなる。
派遣切りやその後の派遣村など社会情勢の変化があったことは理解するが、制度を変える必要があるのか。セーフティーネットの整備に異論はない。もっと有効な予算措置の活用で対応できるのではないか。
労働側・古川委員 冒頭、部会長から昨年の法案をべースに…ということで話をいただいた。現行法は事業法と理解している。三党案のいうように、これを保護法とすることに、どれだけ意識があるのか。
公益・清家委員 私が先ほど申し上げた趣旨は、労使が合意することで実効性が担保され、ILOの精神が担保されるものであってほしいということだ。前回の政府案でも、労働者保護についての趣旨が盛り込まれたと理解している。
労働側・古川委員 派遣が社会的批判を浴びているのは、派遣の活用があまりにも野放図だったことにあるのではないか。その結果、派遣労働者の保護がおざなりになり、無権利状態になったことによるのではないか。
労働側・小山委員 私たちは機械金属の製造業、それも中小企業を中心に組織しているが、痛ましい現状を見てきた。製造業での雇用調整が急激に進んだ。これは何だったのか。オイルショック、バブル崩壊のこれまでとは違ったスピードで契約を切られた。これは、直接雇用と間接雇用の違いがあるのではないか。間接雇用の派遣は、雇用責任を負わず、手を汚さずに生首を飛ばすことができた。昨年の上期は史上最高の利益、下期は赤字で働いている人の生活を奪った。仕事だけでなく住む場も失い、雇用保険も受給できず、退職金もない。前回は登録型について十分な議論ができなかったが、きちんと議論することが部会に課せられた使命ではないか。99年改正がよかったのか、本格的な議論が必要ではないか。
使用者側・高橋委員 今回の検討に当たっての留意点について提案したい。まず、昨年の出来事は100年に1度と言われる異例のことで、雇用調整の背景には大幅な受注減があった。基本的には、平時におけるあり方について検討すべきだ。
また、昨年来、何もしなかったわけではない。指針の改正や許可基準の見直しも行った。雇用保険法も改正され、非正規労働者が受給しやすくなった。緊急雇用対策も実施している。
派遣を選択している人への影響を考える必要がある。どの程度の人が選択しているのかデータを元に議論したい。
三党案の背景にある目的、趣旨を説明してほしい。
厚生労働省・鈴木課長 不十分なところがあり、必ずしも適切かはわからないが、私の理解の中でご説明させていただく。
派遣は雇用が安定していない、登録型派遣を禁止することで雇用の安定を、ということ。
製造業への派遣の原則禁止は、派遣労働者の労災の多発など、安全衛生面での確保ができていないこと。そして、技能継承に目的を移すということのようだ。
「2ヶ月」の規制は、社会保険の適用がないことや解雇制限などを考慮したということのようだ。
使用者側・佐藤委員 今後の議論の前提としてセーフティネットが必要、技能訓練が必要ということについて異論はない。なぜ、中小企業で派遣を活用するのか。それは、必要な人材を必要な時期に確保するのが難しいからだ。これができなければ、海外にシフトしていくと公言している経営者もいる。
労働側・長谷川委員 三党案について。名称の変更はなるほどと思った。目的の変更についても何ら問題はないだろう。「2ヶ月」は興味深い数字だ。一考に値する。労働基準法20条、21条の解雇制限、社会保険をクリアするため考える必要があるのではないか。登録型派遣の禁止についても、議論する必要があるのではないか。そもそも85年の法制定時にどれだけ、考慮されたのか。派遣の問題は登録型の問題だ。
事務局に、もっぱら派遣を禁止している趣旨を聞きたい。またインハウス派遣についてどう考えているのか聞きたい。
均等待遇は必要だ。労働条件が悪くなるのは、均等・均衡待遇が考慮されないからだ。
情報公開については、マージンが問題。平均ではなく、個々人別に示すべきだ。
派遣先責任の強化は必要だ。雇用保険法、社会保険に未加入が多く、この点について強化していくことが必要だろう。
労働側・小山委員 三党案では製造業派遣を明確に禁止している。製造業への派遣の解禁はごく最近だ。これを冷静に考える必要がある。派遣が解禁される以前は、期間工やパートなど直接雇用で対応してきた。
バブル崩壊後の不況で我々あの労働組合も、約10万人組合員が減った。しかし、人間が減ったわけではなく、その分が派遣労働者に置き換わった。さらに3年の期間制限の中で2009年問題があり、それぞれ経営者は真剣に考え、また行政の指導もあり、直接雇用になっていった。
急激に派遣が増えていく中で、コストの低減はできたかもしれないが、製造業の現場力が低下した。未熟練の派遣や請負が増えていく中で、小さい事故も含め、労災も多発した。
本質は直接雇用だ。国際競争力に打ち勝ってきたのはコスト競争ではなく、技術力による。産業構造が大きく転換していく中で、技術・技能を伝承していく必要がある。そこから、考えると物の製造業務への派遣は禁止されてしかるべきだ。
また、派遣は職業ではない。派遣を禁止することで職業選択の自由を奪うというのは欺瞞としか言いようがない。
臨時的な労働力が必要であることに異論はない。人が採用できないという点については、職業安定行政が担うべきだ。
先ほども言ったが手を汚さずに生首を切れる派遣は麻薬のようだという人もいる。本当に雇用調整が必要なら、それなりの苦労が必要だ。
先ほど市川委員から、中小企業の製造業務ではバリ取りや梱包で派遣が必要との話があったが、このような仕事は請負でやっている企業も多く、派遣である必要は全くない。
厚生労働省・鈴木課長 先ほどの長谷川委員からの質問について。もっぱら派遣については、第二人事部のようになり、適切な需給調整機能を果たさないことから許可されないという仕組みだ。グループ内派遣も同じで、グループで一体的に人事管理を行っているようなケースも多く、このような場合、適切な需給調整機能を果たしているとはいえないということだ。
使用者側・市川委員 先ほど、鈴木課長から製造業務について目的を技術継承にするという説明があったが驚きだ。技術継承は、派遣ではなく正社員が担うべきと考えている。三党案の趣旨が鈴木課長の説明通りだとすると、現実を踏まえていない。
現在、認められていることを法律で禁止するということは、権利を奪うことになる。一人でも権利が奪われた人がいれば、憲法違反で訴えることもできるのではないか。これは、未組織労働者の「声なき声」だろう。現在の労働組合の組織率から考えると、このような声なき声が反映されているのか疑問だ。
労働側・長谷川委員 99年までは製造業務への派遣は禁止されていたが、これも憲法違反といえるというのか。
使用者側・市川委員 解禁されたことを禁止するのは憲法違反になるのではないかということだ。
労働側・長谷川委員 私たちは、派遣労働者を始め、多くの労働者を組織して意見を聞いており、この点を十分に頭に入れてほしい。声を反映していないというのは侵害だ。
経営側・高橋委員 当初の案のように日雇い派遣についてはポジティブリスト化を検討してもよいのではないか。
登録型派遣については26業務以外にもニーズがある。例えば、公的年金を受給しているために短時間の勤務を希望している人、家計補助的な働き方を希望している人などだ。また、廃止された場合はどのような働き方に誘導していくかも検討すべきだ。
中小企業には人が集まらないと言う点も理解してほしい。日本がこのような規制をした場合の対内直接投資への影響もあるのではないか。
もっぱら派遣については、企業城下町のようなケースはどう考えるのか。
均等待遇については、企業を超えた職種別賃金のない日本では難しい。均衡待遇を目指すべきだ。
派遣先労働組合への通知義務については、通知することによる法律効果がわからない。
派遣先責任の強化のうち、賃金や社会険料について、派遣先にも責任をもたせるとなると、雇用責任が曖昧になるのではないか。団交の応諾義務についても、なぜかわからない。
見なし雇用については、契約自由の原則に違反するのではないか。また、有期契約だったものが、なぜ無期にかわるのかが不明だ。
罰則については、他の法令との整合性を考えるべきだ。
公益・柴田委員 労使の意見にそれぞれ説得力があるが、議論の対象が違うのではないか。実態がどうなっているのか、示してほしい。ワーキングプアといわれるように若者がスキルを身につける機会を持たないことは問題だ。
全体として派遣先へのプレッシャーが強いようだが、雇用者である派遣元が責任を果たせるような仕組みにしていくことも必要だ。
公益・鎌田委員 清家部会長の冒頭の意見はその通りだろう。研究会で意見をとりまとめたが、その際、経済原理ではなく、社会的に許容される制度は何か、互譲の精神で決まった。廃案になったため、現行法のままだ。これでいいのか。労使とも不満もあるだろうが、議論をまとめてほしい。
名称の変更はやや技術的な問題もある。事務局にも検討してほしい。
「30日」としたのは、雇用保険法42条を考慮した。
登録型については、禁止ではなく常用型にどう移行していくかを考えた。また、禁止した場合、常用化を進めるための制度である紹介予定派遣はどうするのか、高齢者派遣はどうするのか。
製造業務について、市川委員から正社員が担うべきとの意見があったが、それでは寂しい。促進を考えていいのではないか。
均等待遇は総論としてはいいが、各論をしてはどうか。現実にどう近づけていくのか、バランスを採ることを考えることも大切ではないか。
団交応諾義務については判例があるので、紹介いただき整理できればいいと思う。
派遣先責任の強化のうち賃金支払いについては、労働側の気持ちはわかるが整理が必要だろう。
見なし雇用については、偽装請負が「等」に整理されている。偽装請負で働いている人をどう救済するかは、研究会の議論でも大きな課題だった。いろいろ工夫した結果、申し込み勧告になった。見なし雇用は、労働者が申告しなければ放置されるのか。不明な点が多い。申し込み勧告の場合、違法が確認されれば勧告を行える。
労働側・小山委員 常用雇用の定義が曖昧なまま議論されている。この点についてしっかり議論してほしい。

[参考リンク]
>>議事録(10月15日)(厚生労働省)

← 労働力需給制度部会レポート(トップ)