労働政策審議会職業安定分科会レポート(10月7日開催分)

職業安定分科会所属委員名簿(五十音順)[平成21年8月1日現在]

<公益代表>
岩村正彦 東京大学大学院法学政治学研究科教授
大橋勇雄 中央大学大学院戦略経営研究科教授
白木三秀 早稲田大学政治経済学術院教授
清家 篤 慶應義塾長
征矢紀臣 (社)全国シルバー人材センター事業協会会長
橋本陽子 学習院大学法学部教授
宮本みち子 放送大学教養学部教授
<労働者代表>
石村龍治 全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会書記次長
斉藤 常 JAM書記長
徳茂万知子 全日本自治団体労働組合副中央執行委員長
長谷川裕子 日本労働組合総連合会総合労働局長
古市良洋 全国建設労働組合総連合書記長
堀 峰夫 日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長
吉岡敦士 日本サービス・流通労働組合連合副会長
<使用者代表>
荒 真理 日本アイ・ビー・エム(株)人事 労務 ビジネスコントロール
石井卓爾 三和電気工業(株)代表取締役社長
市川隆治 全国中小企業団体中央会専務理事
上野敏夫 日産自動車(株)人事部報酬・労務グループ担当部長
久保昌三 (株)上組代表取締役社長
高橋弘行 (社)日本経済団体連合会労働政策本部本部長
橋本浩樹 王子製紙(株)取締役 常務執行役員 人事本部長兼務

注)◎=分科会長、○=分科会長代

公・征矢委員
登録型派遣についての論議は、ILO181号条約との整合性や憲法27条などを考慮すべき。憲法22条の職業選択の自由についても考慮すべき。登録型が公共の福祉に反するのか、踏まえて議論すべき。原則禁止とする場合、主婦、高齢者など利用している人たちがいるのに、利用できなくなる。本当に公共の福祉に反しているのか、危惧される。

労・長谷川委員
昨年の秋以降、労働者の中に何が起こったか、真摯に受け止めるべき。10月から12月、1月に起こった事態は、国民にとってショックだった。みんな、まじめに働いていれば、生活していけると考えていた。なのに、多くの労働者が突然解雇されて、住むところも失うような事態に至った。間接雇用はどうあるべきか、大きく働くことについて考えて、派遣を議論すべきだ。中途解約の問題、派遣契約と実際に働く期間の違いをどう考えるか、雇用保険の加入促進をどうするのか、派遣元の使用者責任とは何なのか。今まで、様々な働き方について議論されてきたが、今回の状況からセーフティネットがきちんとしていなかったことが露呈した。雇用は依然として厳しい状況。働く意志があっても、働けない状況だ。使用者責任のあり方を見直すべく、大胆に議論を。

使・石井委員
中途解除などのひどいケースもあるが、製造業の禁止まで言うのはどうか。企業は、厳しい国際競争にさらされ、値下げ、コスト下げを迫られている。派遣法の見直しが、このような流れで進むなら、国内に製造拠点を持てなくなると話している。また、地方の中小企業は、人を雇えなくなる。製造業をどうもっていくのか、いろいろ考えたうえでの議論をしてほしい。
使・?委員
昨年末からの悲惨な状況は、世界同時不況がもたらしたもの。それが、製造業派遣禁止につながるのか。派遣労働については、正社員で働きたくても働けない人もいるが、一方で子育てしている主婦のニーズも相当ある。相当のニーズがあることを考慮して議論すべきだ。中小は人を集められないので、派遣会社が、そこの機能を果たしている。ある会社が傾いたら、別の会社へ人を、というのが派遣会社の役割だ。ここのところの状況では、全ての会社の調子が悪くなったが、そのときは政府のセーフティネットの出番だ。世界的に見ても、製造業派遣の禁止はない。製造業派遣の禁止は、国政競争力を弱める。ILO条約に照らしても、特定業種を対象とした派遣禁止でいいのか。

労・古市委員
派遣労働者の保護がゆるゆるであることが問題だ。労使の意見には違いがあって、なかなかまとめるのは難しいけが、審議会の役割が問われている。世間の要請に応える議論をするべきだ。

公・岩村委員
労使が直接話し合って決めることが重要。難しいことは重々承知しているが、コンセンサスでやるがこと大切だ。今、規制するべきなのかについては、疑問を持っている。派遣労働をどう整理するか、どう位置づけていくのか。旧政府案と3党案の内容は違う。その点も含めて幅広い議論をするべきだ。製造業派遣については、どんな問題があって、どう対処できるのか、から議論をはじめるべき。いきなり禁止からスタートというのはどうか。登録型派遣禁止だと、育児休業の代替などに派遣労働を使えず、有期労働を使うしかなくなる。選択肢が狭まっていいのか(→事務局が3党案についての事実誤認と指摘)。派遣という働き方をどう考えるか。いきすぎた規制は、それはそれで問題。バランスが大切。労使で議論してバランスを。

労・長谷川委員
主婦が問題なのではい。学卒で、仕事のない人たちが大量に派遣で働いて、中途解除などの事態に直面していることが問題なのだ。派遣でスキルがつかない状態でずっと働いて、それで国際競争に勝てるのか。働き方について、きちんと考えるべき。日本がやってこられたのは、人材があったからこそ。そこを考えて議論するべきだ。

使・高橋委員
雇用の安定は何よりも重要。派遣のマッチング機能が、労働力需給で一定の役割を果たしてきたことを踏まえて論議するべきだ。この議論が派遣労働者にどんな影響を与えるか考えるべき。規制をするにしても、市場に混乱起こさないように。雇用の安定を図るべきだ。現在の状態は、今までにない世界不況の下で起きたこと。通常の市場の中での派遣労働のあり方を考えることが重要だ。労働力が減少するなかで、全員参加を考えたら、派遣を含めた多様な働き方が必要だ。

公・岩村委員
仮に、製造業派遣を禁止したところで、その人たちが正社員で雇われることになるのか。これが根本の問題だと思う。どうか分からないが、別の働き方になるのだろう。また、その働き方に規制をかければいいということかもしれないが、どうだろうか。製造業派遣を禁止すれば、正社員になれるのか、そこのところが見えてこない。

公・宮本委員
働き口のない若年者は、派遣がなくなれば、非正規に流れる。派遣だけでなく、非正規全体を含めた議論が必要だ。単純に正規化がいいのかも、念頭において議論すべき。

使・市川委員
まさに、日本のものづくりを支えているのは人材だと思う。匠を期待するのは正社員。派遣労働者が期待されているのは、製品サイクルが短く、長期に正社員を雇っていくのは難しい季節性の高い仕事だ。正社員に期待するものと、派遣労働者に期待するものは違う。

公・大橋委員(分科会長)
一つ一つの案件を、ギシギシやるよりも、需給システム全体で議論するべきだろう。セーフティネットがしっかりしていれば、登録型でもいいという議論もあるだろう。国際的な相場も考えながら議論したい。具体的な議論は労働力需給制度部会で行いたい。

[参考リンク]
>>議事録(10月7日)(厚生労働省)

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