第5回研究会レポート

5月16日(金)、厚生労働省で第5回目の「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」が開催されました。
第3回目、第4回目の同研究会は、派遣労働者や派遣会社の担当者などからのヒアリングが非公開で行われていたため、今回は約3カ月ぶりの公開での研究会となりました。
この日は、これまでのヒアリングなどと経て、以下のような「派遣労働者の雇用の安定について(論点)」が示されました。

派遣労働者の雇用の安定について(論点)

【論点】
1.「登録型」「常用型」の在り方について

(1) 「登録型」「常用型」はそれぞれどのような機能を果たしており、何が問題となっているか。特に職業紹介等と比較して、それぞれどのようなメリット・デメリットが考ええられるか。また、いわゆる「26業務」とそれ以外の業務とで、違いはあるか。
(2) 「登録型」を禁止すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(3) 「常用型」については、安定した雇用と評価し得るか。そのためには、定義や規制の在り方等についてどのような対応が考えられるか。
(4) 「登録型」の派遣労働者の雇用の安定を図るため、どのような対応が考えられるか。例えば、派遣元での常用型労働者への転換、派遣先での直接雇用、派遣先以外の企業での直接雇用等が考えられるが、その実現のため、派遣元、派遣先、国等はどのような役割を担うことが適当か。

2.日雇派遣の在り方について

(1) 日雇派遣はどのような機能を果たしており、何が問題となっているか。特に、派遣でない日々雇用が存在する中で、職業紹介等と異なる日雇派遣固有のメリット・デメリットはなにか。
(2) 日雇派遣は禁止すべきとの意見があるが、派遣ではない日々雇用が認められていることや、労働者派遣制度が臨時的・一時的な労働力の需給調整を図るものとして位置づけられていること等を踏まえ、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(3) 日雇派遣労働者の雇用の安定を図るため、どのような対応が考えられるか。また、派遣元、派遣先、国等はどのような役割を担うことが適当か。

3.期間制限等について

(1) 期間制限はどのような機能を果たしており、何が問題となっているか。
(2) 期間制限を撤廃すべきとの意見や、期間制限の上限を延長すべきとの意見等があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(3) 派遣の活用事由を制限すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(4) 派遣の対象業務を制限すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。

4.雇用契約申込義務等について

(1) 常用型については、雇用契約申込義務を撤廃すべきとの意見があるが、常用型の派遣労働者の雇用の安定の観点等を踏まえ、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(2) 登録型に係る雇用契約申込義務について、どのように考えるか。
(3) 「みなし雇用制度」を導入すべきとの意見があるが、どのようなメリット・デメリットが考えられるか。
(4) 派遣先企業における社員登用制度について、どのように考えるか。
(5) 派遣労働者のキャリアパス(常用雇用への道筋等)について、どのように考えるか。

この日は、上記のうちの「1.「登録型」「常用型」の在り方について」「2.日雇派遣の在り方について」について議論が行われました。
なお、今回はそれぞれの発言がだれのものか確認が不十分なため、付記しておりません。

【研究会での議論】

1.「登録型」「常用型」の在り方について

  • 常用型と登録型は求められるスキルレベルに違いがあるのではないか。常用型の技術者などを見ると、スキルレベルが高く、スキルアップも行われている。そう考えると、スキルと派遣の在り方は関連するのではないか。
  • 登録型派遣には労働市場のミスマッチを是正する意味があるのではないか。ただし、それと労働者保護とは別の問題だ。
  • ある一時点を切り取れば、ミスマッチの是正などは言えるが、登録型で働いている人の10年後、20年後を考えないといけない。アメリカの調査では、刑務所から刑期を終えて出てきた者が、派遣で働いた場合と正社員で働いた場合を比較すると、正社員のほうが定着率も年収もいいというデータもある。日本ではそういう調査はないと思うが、教育訓練も不十分でキャリアパスが見えない状況は何とかしなければいけない。
  • 登録型の場合、3カ月など契約を更新し続けているケースも多いようだが、その場合の能力開発のインセンティブはあるのだろうか。
  • インセンティブはないのだと思う。ないことが問題なのだ。
  • 需給調整といっても需給を固定化しかねず、労働市場の在り様がよくなっていかないのではないか。
  • 登録型派遣には、ある一時点では摩擦的失業(需要の変化により、ある産業が業績不振となって生じた失業者を、他産業がすぐ吸収できない場合に、一時的に発生する失業:出展・大辞林)を防止する役割もあるのではないか。
  • 登録型派遣を禁止することで、現在、登録型で働いている派遣労働者が正社員になるのであれば賛成だがそうなるのか。外部労働市場のツールが十分発達していない中で、正社員になることは考えにくい。正社員になるかは、受け入れる企業の雇用管理と密接にかかわっている。需給調整のツールをひとつ消すことが、どのような影響を与えるのか。そのことによって、ポジティブになっていけばいいのだが・・・。
  • 登録型を禁止すべきかと問われれば、そうは思わない。ただし、このままでいいとは考えていない。派遣元でも派遣先でも登録型派遣労働者の能力開発が十分にできないのであれば、国がどう扱っていくのかを考えることになる。生活と職業訓練が両立できる環境を整えていくべきではないか。
  • 派遣元、派遣先とも短期とはいえ使用者としての一定の責任はあるので、国の施策だけでいいとは思えない。
  • 派遣労働者のスキルレベルが上がっていない派遣元の労働保険料率を引き上げるなどによるインセンティブも理論的には考えられるが現実には難しい。
  • ・ 登録型と言いながら、同じ派遣先で10年以上働いている派遣労働者もいる。解雇が制限されている中で、実は長い労働需要を満たしている。実際にテンポラリーとして短期の需給調整に対応する場合と、テンポラリーに見せかけている場合を分けて考えるべきだ。派遣における雇い止め規制についても考えるべきではないか。
  • 現状では期間制限があるはずだが、実際に行われているのであれば保護されるべきだ。労働契約法第17条2項では「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」としている。この規定を派遣労働者にどう活かすか考えていかないといけない。
  • 常用型は雇用の安定が図られていると社会的に評価できるが、この場合の常用型とは向き契約を想定している。

2.日雇派遣の在り方について

  • 日雇派遣のイメージとしては日々雇用で軽作業で統一したい。
  • 日雇派遣が悪いのか、日雇派遣の中にスキル形成などが見えないことが悪いのか。少なくとも今はスキル形成などが見えない。それができればニーズはあるので、継続することも考えられるのではないか。
  • ヒアリングで聞いた、日雇派遣労働者が業務上災害に被災したときの対応の悪さを考えると、規制すべき事実があると考える。
  • しかし、学生などには便利にアルバイトができるというニーズもある。
  • 人の属性を対象にして禁止することが、立法技術としてできるのか。できればいいが現実には難しい。たしかに学生にはニーズもあるが、リスクも同じようにある。派遣で行う必然性はなく、全面的に禁止したとしても職業紹介で対応できる。
  • 何が問題かを派遣法の趣旨から考えていくべき。派遣の持っている臨時・一時的という趣旨から直ちに問題にならないが、労働者保護の観点からいえば、派遣元の雇用責任を狭め、コンプライアンスに問題のある派遣元が多発した。
  • 事務局に伺いたいが、なぜ建設業務と港湾運送業務の労働者派遣を禁止しているのか。
    (厚生労働省)暴力団などが介在する、いわゆる「手配師」の問題がある。解禁することで無法状態になってしまうのではないかということから禁止している。
  • そもそも日雇派遣で安全教育はだれが責任を負うのか。
    (厚生労働省)雇い入れ教育は派遣元、現場に対応した教育は派遣先になる。このため、日雇派遣の場合は、どこかに集合してバスなどで移動する際に雇い入れ教育を、現場についてから現場に対応した教育を行うことになるのではないか。
  • ヒアリングでは「倉庫内の仕事」などの説明だけで、教育などはなかったと言っていた。指針などやるべきとしているので、やればいいということになるのだが・・・。
  • 臨時・一時的な需要に対応していこうということで99年の改正があった。その当時、日雇派遣は想定していなかった。日雇では安全教育のコストを還元できず、事業として成り立たないと思っていたが、様々な違法を伴いながら拡がっていった。派遣元の雇用主としての責任を十分に成り立っていない中で成り立っている事業だと理解した。そうはいっても労働者のニーズがあれば指針の改正で対応して…とも考えた。しかし、ヒアリングではJSGUでも日雇派遣の禁止には反対だが、危険な業務は禁止すべきとしていた。ヒアリングで労働者に話を聞いても安全衛生に問題があると思った。政策的に考えると、私(鎌田座長)は、もう日雇派遣を認めるのは難しいのではないかと考えている。
  • 日雇派遣はコンプライアンスの問題があるから禁止すべきとも聞こえる。仕組みとして問題があれば禁止に賛成だが、そこまでの判断はできない。禁止した場合のその後の対応はどう考えるのか。
  • ハローワークを始めとした国が責任を取るべきだ。国が中核となって、対応していくべきだ。

なお、次回の開催は5月30日(金)を予定しており、「3.期間制限等について」「4.雇用契約申込義務等について」の議論が行われます。

[参考リンク]⇒ 第5回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会資料(厚生労働省)
[参考リンク]⇒ 第5回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録(厚生労働省)

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