第6回研究会レポート

5月30日(金)、厚生労働省で第5回目の「今後の労働者派遣制度のあり方に関する研究会」が開催されました。
この日は、前回の続きで「派遣労働者の雇用の安定について(論点)」の「3 期間制限等について」「4 雇用契約申込義務等について」の議論が行われました。以下では、議論の要旨をレポートします(阿部正浩獨協大学経済学部准教授は欠席)。

【研究会での議論】

3 期間制限等について
有田氏 派遣労働者の中には同じ派遣先で派遣労働者としてずっと働き続けたい望む意見もあるようだが、全体の雇用政策から考えると常用代替となることは望ましくない。常用代替を防止することをとるべきではないか
有田氏 派遣を活用できる事由を限定すべきとの議論もある。フランスでは有期雇用を例外として位置づけている。日本には有期雇用に関する規制はない。有期契約との関係についても考えるべきではないか。
有田氏 派遣を3年まで延長し、3カ月のクーリング期間を使って同じ労働者が何年も同じ職場で働くことが可能になる。期間制限を設けていることの実効性を担保し、悪用・脱法を防ぐ手立てを考える必要があるのではないか。
厚労省 現行法の範囲内での取り締まりの徹底をしていく。同じ人間が、派遣―直接雇用―派遣ということになれば転籍出向に該当し、労働者供給事業に当たる可能性もあると考えている。
鎌田氏 対象業務を限定したポジティブリスト方式に戻すべきではないのかという意見もあるがどう考えるか。
山川氏 期間制限と業務制限はセットで考えるべきではないか。
鎌田氏 業務を広く認めることはILOでも確認されてきた。日本で再度業務を規制することは、直ちにILO条約に抵触することになるとは考えられないが、ドラスティックだと思う。
期間制限は、常用代替の防止から問題になった。しかし、個々の労働者の雇用の安定ではなく、日本の雇用システムをどうすべきかという問題になってきた。同じ派遣先で派遣労働者として長期で働きたいという希望はわからないではないが、法律上明文化はされていないものの、長期雇用を前提にしている日本の雇用制度そのものを変えることになりかねず躊躇せざるを得ない。
山川氏 「常用雇用の代替防止」という言葉の意味が法制定時と変わっているのではないか。正社員であることが何よりも大切ということではない。現状では、有期契約で安定的でないものも「常用派遣」に含まれているのは整理すべき。

4 雇用契約申込義務等について
鎌田氏 「みなし雇用制度」を認めるべきとの意見があるが、現在、こうした制度はない。どういうものであると考えるのか。
厚生労働省 雇用の申込みなどの派遣先の行為がなくても派遣労働者との雇用関係が成立したとみなすもの。派遣先で何らかの事由があった場合、派遣労働者の雇用責任を認めるものと考えている。
鎌田氏 例えば派遣事業の許可をとっていない派遣元から派遣労働者を受け入れた場合、派遣労働者が実態は派遣であると訴え、認められれば当事者の合意を得ずに雇用関係を擬制するもので、この場合は制裁になる。現行法の直接雇用の申込み義務は制裁ではない。
有田氏 常用雇用の場合は直接雇用の申込み義務は不要との意見もある。しかし、常用雇用でも有期契約の場合もあり、なくしてしまうことは雇用の安定に不安が残る。専門の26業務で常用型ということであれば、対象としないことも考えられるのではないか。  登録型の場合は、優秀な人材を派遣先にとられてしまうという危惧があるのではないか。
山川氏 登録型で雇用申込み義務がなくなれば雇用が不安定になる。本当に雇用が安定している常用型なら対象としなくてもよいのではないか。
鎌田氏 常用型が無期で安定した雇用なら直接雇用の申込み義務をはずしてもいいと私も考える。
違法な派遣の指導勧告が行われた場合、派遣労働者が職を失う可能性がある。ドイツはこうしたことを改善する工夫としてみなし雇用を取り入れたのではないか。たしかにみなし雇用は派遣労働者にとってはいいが、派遣先は押し付けられた感じがすることもある。
有田氏 派遣の仕組みから見直すことも検討すべきではないか。雇用制限に違反し、なおかつ継続しているのであれば、派遣法の立法主旨である常用代替防止という根幹に影響する。この場合に、直接雇ってくれというのは制度上問題ないのではないか。
鎌田氏 当事者の意思にかかわらず、雇用契約が成立したとみなすのは、判例でも判断が揺れている。現時点で認めるのは大胆だと思う。
山川氏 みなし規定を設けてもみなすと認められるために裁判をしなければならないとなると時間がかかる。直接雇用の申込みの義務を履行しなかった債務不履行として整理してはどうか。
有田氏 みなし規定を設けることが難しいのであれば、たしかに直接雇用の義務を履行しなかった債務不履行として賃金相当額の支払いをさせるなどもあり得る。

なお、次回の開催は6月13日(金)を予定しています。

[参考リンク]⇒ 第6回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 配付資料(厚生労働省)
[参考リンク]⇒ 第6回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会議事録(厚生労働省)

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