第7回研究会レポート

6月13日(金)に第7回目となる「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が開催されました。 今回は「均等・均衡処遇の考え方、派遣元と派遣先の役割分担の在り方について」として4つの論点について、議論が交わされました。以下では、各論点ごとに議論の要旨をご紹介します。

均等・均衡処遇の考え方、派遣元と派遣先の役割分担の在り方について(論点)

【論点】
1 派遣労働者の均等・均衡処遇について、「積極的に研究・検討すべき」との意見があるが、特に、(1)パート労働者に係る均衡処遇と異なり、派遣労働者と派遣先の労働者では雇用主が異なっていること、(2)比較対象労働者をどのように定めるか、(3)均等・均衡の対象となる処遇の範囲はどこまでかということを含め、どのように考えるか。
また、均等・均衡処遇のほかに、派遣労働者の働き方にふさわしい処遇の実現を図るため、そのような対応が考えられるか。

鎌田氏 均等処遇については、ドイツが進んでいると聞いている。どのようになっているか橋本先生に伺いたい。
橋本氏 ドイツでは2003年の法改正で、派遣先の労働者に適用される労働条件を下回る労働条件を定める場合は、許可がなされない、また当該定めは無効とされることが明記された。ただし、これは常用雇用の派遣労働者、労働協約で異なる定めをしている場合は、適用されないとしている。
このため、多くは労働協約を締結している。そこでは1~9等級の賃金表が定められていて、組合員以外にも広がっている。この方式はオランダがモデルだと聞いている。
有田氏 派遣労働者に対する派遣料金などの明示義務はあるか?
橋本氏 法律条文にはなかったと記憶している。
鎌田氏 論点にあるとおり、派遣先の正社員と派遣労働者の均等を図るとした場合、だれとどの程度までの均衡を図るべきなのか? また、派遣元の正社員との均衡ということも考えられるのではないか?
有田氏 退職金や福利厚生までを含めた均等・均衡処遇を考えた場合、同一価値労働・同一賃金を超えることになるのではないか。

【論点】
2 派遣契約単価と労働者に支払われる賃金の差(いわゆる「マージン」)について規制すべきとの意見があるが、どのように考えるか。今般の派遣元指針の改正により、派遣元事業主は、派遣労働者及び派遣先が良質な派遣元事業主を適切に選択できるよう、派遣料金の額や派遣労働者の賃金の額に関する情報を公開することとしているが、これに加え、どのような対応が考えられるか。

鎌田氏 事務局に伺いたいのだが「マージン」の定義はあるのか?
厚生労働省 特にない。ヒアリングでは、一般的に「派遣料金‐派遣労働者の賃金」と考えられているのではないか。
有田氏 マージン規制を求める意見の背景には、本来は他人の就業に介在して利益を得ることが禁止されているが、その例外として派遣が認められているということがあるのではないか。しかし、法律でのマージン規制はいかがなものか。個別に内訳を明示することで、派遣労働者が適切に派遣先を選択できるようにすべきではないか。
阿部氏 個別の情報を一般向けに開示することは意味がないのではないか。
山川氏 労働条件をより明らかにする方向で考えるべきではないか。改正パート労働法でも待遇に関する説明が義務付けられている。
有田氏 例えば、登録した段階で、教育訓練も含めて開示することも考えられるのではないか。
鎌田氏 そのような方法は、優良な派遣元を育てていく上で有効だろう。
ところで、仮にマージン規制を設けた場合、どのようなことが考えられるか。
山川氏 利益を確保するため広告費、人件費、教育訓練費を減らす方向で働く可能性がある。
阿部氏 派遣労働者にとってネガティブになるかポジティブになるかはわからないが、派遣元は「より効率的なマッチング」をしようとするのではないか。
鎌田氏 すると、結果としてマージン規制は現在行われている教育訓練が行われなくなるなど、派遣労働者に悪影響を及ぼす可能性もあるということになる。私自身としてもマージン規制には慎重にならざるを得ない。

【論点】
3 派遣労働者の教育訓練について、どのような内容が考えられるか。また、派遣元・派遣先はそれぞれどのような責任を負うことが適当か。さらに、積極的に教育訓練を行う派遣元・派遣先が評価される仕組みは考えられないか。

阿部氏 だれが教育訓練の費用を負担するのかを考える必要がある。現在、派遣元は派遣労働者に教育訓練をしてもインセンティブがない。きちんと教育訓練をして、派遣先を確保している派遣元であれば、必然的に離職率も低くなる。そのような派遣先の雇用保険料率を引き下げるなども考えられるのではないか。
厚生労働省 離職率に応じて雇用保険料率を変動させるというのは、以前にも議論になったが技術的に難しい。
山川氏 日本人材派遣協会の中で、仕組みを作ることも考えられるのではないか。
有田氏 派遣会社の雇用保険料率(ニ事業分)を引き上げて、その分を教育訓練費用に充てることも考えられるのではないか。
鎌田氏 前回、積み残しになっていた派遣労働者の派遣先への雇用やキャリアパスの仕組みについてもここで議論したい。私自身は、派遣先への雇用を法律上義務付けるのは難しいのではないかと思う。
有田氏 キャリアパスについては、派遣先での正社員化を望む派遣労働者にどのような教育訓練が必要かなどの情報提供はあるべきだ。

【論点】
4 社会・労働保険、時間外労働、安全衛生、労災補償、未払賃金の立替払い、団体交渉、雇用責任等について派遣元と派遣先の重複責任とすべき等の意見がある。特に労災補償については、ヒアリングでも派遣先も責任を負うべきとする意見があったが、これら派遣元と派遣先の役割分担をどのように考えるか。また、派遣受入れについて派遣先労働組合への通知及び意見聴取を義務付けるべきとの意見があるが、どのように考えるか。

鎌田氏 派遣元・先の重複責任としては、特に労災が問題になるところだ。
山川氏 現在は派遣元のみが労災保険を負担しているが、どちらが負担することになっても派遣労働者は労災保険の補償を受けられる。派遣先が原因で起きた事故については、派遣先に費用徴収をすることも考えられるのではないか。
鎌田氏 現在は、派遣元のみが費用の負担をしているため、派遣先で事故が起きても派遣先のメリット制には影響しない。派遣先のメリット制に影響する仕組みはつくれないか。
厚生労働省 労災保険料を負担していない派遣先にメリット制を影響させることは困難だ。派遣元と派遣先の按分ということも考えられるが技術的に難しい。また、こうした仕組みは労災隠しの増加が懸念される。
鎌田氏 社会保険料は、ドイツではどうなっていたか。
厚生労働省 今、資料が手元にない。主体が派遣元としつつ、派遣先が連帯して責任を負うこととしていたと記憶している。
有田氏 派遣先にも雇用保険二事業分の上乗せの負担してもらい、基金をつくるなども教育訓練に充てることも考えられるのではないか。

なお、次回のテーマは(1)事前面接、(2)紹介予定派遣、(3)専ら派遣で、6月27日(金)に開催を予定している。

[参考リンク]⇒ 第7回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 配付資料(厚生労働省)
[参考リンク]⇒ 第7回 今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録(厚生労働省)

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