第2回部会レポート

10月27日 労働力需給制度部会
前回の議論と労働者派遣法改正の三党案をもとに厚生労働省がまとめた「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」に沿って、議論を進めていくことを確認した。 今回はこのうち「1.登録型派遣」と「2.製造業派遣」について議論された。
なお、議論を進めるに当たって「今回挙げられた項目以外に、付け加えるべき項目はあるか」という清家部会長の問いに対して、労働側・長谷川委員から「時間的なこともあるが、派遣の事業許可要件なども議論したい」との意見が出された。
しかし、これに対しては厚生労働省・鈴木課長は「時間的に余裕がなく、今回は大臣の諮問に沿って進めさせていただき、今後の議論とさせていただきたい」との意見が受け入れられ、今回は議題にされないことになった。

1.登録型派遣
労働側・市川委員 前回欠席したので、全般についての話をしたい。論点では最後になっているが、本来であればまず主旨を議論し、その上で議論を進めるべきではないか。法律名称の変更などは主旨に関することで、それを早い段階で議論した方がよかったのではないかと思う。
「登録型派遣」とは何かについて未だにすっきりしない。登録型があるから、短期の細切れ雇用があり、雇用が不安定になる。雇用の安定を考えれば原則禁止とすべき。臨時・一時的の名を借りて常用代替になっている。
使用者側・高橋委員 そもそも、大臣の諮問は昨秋の雇用情勢の変化を踏まえたものと理解しているが、派遣でどのような問題があったのか。
厚生労働省・鈴木課長 派遣の場合、派遣元で雇用維持されることがメリットと言われていたが、実際にできなかった。それが登録型で、製造業で顕著に表れた。製造業の問題としてとらえるのか、登録型の問題としてとらえるのかというところはあるかもしれない。
労働側・長谷川委員 前回は日雇い派遣について集中的に議論をした。しかし、労働側は以前から登録型について問題意識を持っていた。リーマンショック以降、製造業派遣が問題になっているが、派遣の基本的な問題は登録型と間接雇用であるということだ。登録型の問題をきちんと議論しないとまた同じ問題が起こる。
使用者側・市川委員 厚生労働省のデータを見ると望んで派遣で働いている人は4割以上いる。原則禁止となれば、この4割を無視することになる。前回、私が「声なき声」と表現したのは、この人たちだ。この人たちの声を部会でも反映させるべき。クリスマスケーキなどの季節に影響されるもの、ケータイ電話などのライフサイクルの短い物の製造に派遣労働は対応してきた。
前回、労働側委員(市川委員の代理・小山委員)から製造業のバリ取りなどはパートやバイトで対応しているとの指摘もあった。半分はそうかもしれない。中小企業は知名度がなく、人が思うように集まらない。こうした業務は製造業務の中でも専門的な業務には該当しないだろうが、経験や勘は重要だ。
登録型と製造業務への派遣を禁止すると、厚生労働省のデータから見ると約75万人が失業することになるのではないか。法律名に「派遣労働者の保護」を加えるというが、派遣切り法案になるのではないか。そう考えて法案を作ったのではないと善意に解釈するが、雇用確保ができないのではないか。慎重な議論をしてほしい。
労働側・市川委員 「4割以上」とする意識調査は、昨年のリーマンショック以前のもの。急激な経済の落ち込みで派遣労働者の意識も変わったのではないか。
使用者側・秋山委員 中小企業がなぜ派遣がなくなると困るのかをお話ししたい。ひとつめは必要なときに、必要な人材を確保できなくなることだ。中小企業は知名度がなく人が思うように採用できない。派遣以前に戻せばいいと言うが、パートやアルバイトの募集をするために求人誌や新聞に掲載してもらうには、頼んでから1週間後、それを見て応募してくるのがさらに1週間後、それに対応するために電話を受けて面接をして…というのは時間もコストもかかる。これをまとめてやってくれるのが派遣のメリットだ。
現在、中小企業の受注量は大幅に減少している。対応するためには、すぐに人を集めて迅速に、1円でも安くやっていきたいというのが現状だ。派遣で働いている人に話を聞くと、 なくなると困るといっている。やりたい仕事を見つけるまでのつなぎなど、実際に好意的に派遣をとらえている。女性の場合、短期で働きたいというニーズもある。
労働側・長谷川委員 派遣がなくなると仕事がなくなるということはない。派遣は仕事と人を結びつけているのであって、仕事がある限り失業はない。
製造業への派遣が問題になるが、根本は間接雇用であることと登録型の問題だ。登録型は何度法律を読んでも理解できない。
派遣法は85年の制定のとき、すぐに育成できないスキルを持った専門性の高い人材を調達するために、その人たちの雇用の安定を前提に設計されている。
登録型の人に能力開発はない。能力開発に力を入れたら利益はなくなる。
一度、登録型で働いたら正社員になりにくいのが問題だ。大胆に割り切るところは割り切って、新たな視点で人材ビジネスの発展を考えることも必要だ。
使用者側・秋山委員 派遣をやめても正社員になれるという保証はない。1人を正社員で雇えば、生涯賃金は1億円と言われる中、派遣の受け入れができなくなったら補充はしないで残業増などで対応するといっている経営者もいる。
使用者側・市川委員 仕事がないというのはまさにその通りだ。景気対策をやってほしい。緊急雇用対策については賛同する。予算的な措置で失業者を救い、能力開発を是非やってほしい。
しかし、法律で禁止するのが本当にいいのか。年末の派遣村に見られるような課題があることは理解するが、法改正でやるのは劇薬。論理の飛躍がある。
使用者側・高橋委員 労使で想定している労働者が異なるのではないか。人材派遣協会のアンケートを見ると、多くが女性で事務系だが、主たる生計維持舎ではない。多様な人がいる。登録型の禁止は、確実に選択肢の減少を意味する。能力開発が不十分であるとの意見はわかるが、だから禁止というのはいかがなものか。派遣元に対して、キャリアコンサルティングを充実させるなどの措置も考えられる。禁止した場合、他の制度で担っていけるのか。世界的に見ても登録型派遣が主流だ。日本だけ禁止でよいのか。
労働側・長谷川委員 先ほど述べたように日本の派遣制度は派遣労働者の雇用の安定を前提に設計され、成立した。欧米とは違う。
派遣先は、雇用管理のリスクを派遣に求めすぎたのではないか。雇用管理のリスクを派遣先がどう負担するのかを考えるべき。
多くの派遣先で派遣に関する費用は物品費として処理されている。「派遣」という商取引の中で、派遣労働者がモノのように扱われる土壌がある。フィラデルフィア宣言にみるように「労働力は商品ではない」。
使用者側・市川委員 前回、代理で出席された方(労働側・小山委員)が、派遣は麻薬と表現した。麻薬である以上、例外もないのでこうした意見は問題で、受け入れられない。
人材ビジネスを発展させるという点については同感だ。そのためには、原則禁止ではなく欠点があれば直していくことも必要だ。
使用者側・秋山委員 私はもとより派遣労働者をモノだとは思っていない。
雇用保険や社会保険に加入できないなどの問題があるなら、こうしたセーフティネットの整備については必要だろう。
労働側・長谷川委員 派遣労働者だから雇用保険、社会保険には入れないということはない。本来、加入させるべきだったのに加入させていなかったことが問題なのだ。
使用者側・市川委員 厚生労働省のデータでは約8割が加入している。
労働側・長谷川委員 その数字は本当か。本当であるならば、なぜ昨年来の景気の低迷で第二のセーフティネットが必要だという話になったか。
厚生労働省・鈴木課長 データの集計には、加入要件を満たさない人も集計に入っている。第二のセーフティネットは、加入要件の緩和などなので、必ずしも本来加入していたはずなのに加入していなかった人の救済のみを目的としているわけではない。
労働側・市川委員 私どもも中小の製造業を組織する労働組合なので、中小企業の経営者の方の話は常日頃伺っている。大方、使用者側の委員と同じような意見だ。しかし、人を雇うには煩雑が当たり前だ。日本は、正社員として雇って育てていくことで高い技術力を維持できた。しかし、これは煩雑でもあり、リスクもあることだ。一度、安易な人材の調達を行うと、こうしたことができなくなり、「人事力」が落ちる。派遣ができる前は、パートや期間工で対応してきたはずだ。
使用者側・市川委員 正社員と派遣では期待される資質が違う。正社員として雇って育てていくことで、高い技術力を維持してきたというのはまさにその通りだ。技術を蓄積し、継承していく役割は正社員に期待しているのであって、派遣労働者にそこまでは期待していない。
緊急雇用対策でも、各種の支援をワンストップで行うとしている。煩雑さの解消は悪いことではないはずだ。
労働側・古市委員 必要な人材を、必要なときに、必要なだけ、責任を負わず…という考え方が社会的に糾弾されているのだと言うことを、委員の皆さんは認識すべきだ。
労働側・市川委員 正社員は大事に育てるけど、派遣はどうでもいいということか。様々な理由から補助的な仕事でしか働けない人もいる。就職氷河期のときに大卒で派遣になってスキルが身につかず、30歳代の半ばを迎えている人たちがいる。こういう人たちをどうするのかということから議論しようということだったはずだ。
労働側・長谷川委員 欧米では派遣から正社員になることが多いが、日本では必ずしもそうなっていない。ニーズがあることは理解するが、一度派遣になったらなかなか正社員にはなれず、抜け出せなくなることもある。将来の税収の問題なども含めて、維持するのが適当かといった視点も必要だ。派遣であってもスキルアップして普通に生活できるようにさせることができるのか。
使用者側・市川委員 派遣から正社員になる例も聞いている。紹介予定派遣の制度もある。まったく道が閉ざされているとは思っていない。スキルが身につかないというが、大手の派遣会社の多くは、パソコンのスキルなどを身につけさせていると聞いている。
緊急雇用対策により生活給付を受けながら、スキルを身につけていくことを期待している。
中小企業は知名度がなく、募集をしても人が思うように採用できない。禁止になれば実害が出る。インフルエンザワクチン製造の現場の目視、これからの季節だとクリスマスケーキの値上がり、またフルーツの缶詰の製造が追いつかず腐らせてしまうようなことも起こりかねない。三党案は、こうした作業を担っている中小企業のいじめ法案になっている。

2.製造業派遣
労働側・市川委員 なぜ99年改正のときに物の製造の業務の解禁は見送られたのか。
厚生労働省・鈴木課長 当時、製造業では適正な請負も多い中、偽装請負の問題などもあり、いわゆる激変緩和措置として時間をおいて認めていこうという主旨だったと聞いている。
労働側・長谷川委員 三党案での製造業務への原則禁止の主旨は何か。
厚生労働省・鈴木課長 派遣先が派遣を切りすぎたこと。本来であれば、派遣元が雇用保障をするはずだがそうならなかった。派遣先にとって、直接雇用ではない切りやすさがあったのではないかとの指摘があった。また、製造業は、長期雇用を前提に技術を蓄積し、労災を減少していくことが必要だとの意見もあった。
使用者側・市川委員 昨年来のリーマンショックは、異常な事態で派遣村などもあった。しかし、派遣だけでなく期間工も正社員も雇用を失っている。製造業務への派遣の禁止は劇薬で特に中小企業には副作用がある。
労働側・長谷川委員 今回の不況では、派遣先の正社員は雇用調整助成金などを使い、比較的雇用が維持されたが、派遣は商取引を解除することですぐに切られた。今後は、派遣元も雇用調整助成金を使って、雇用を維持するようにしていくべきだろう。
公益側・清家委員 議論の途中だが時間の制約もある。製造業派遣の問題は重要。次回も引き続き議論をしていきたい。

[参考資料]⇒「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」に係る参考資料(10月27日)(20091027.pdf 1.2MB)

[参考リンク]
>>議事録(10月27日)(厚生労働省)

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