第4回部会レポート

労働側委員がJAM・市川委員から、同じくJAM・小山委員に変更され報告があった。
今回は「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」の「6.情報公開」から議論が始められた。

6.情報公開
使用者側・高橋委員 前回、日本生産技能労務協会のアンケート調査をご紹介した際、労働側・長谷川委員から調査の対象となっている派遣労働者はほとんどが常用型なのではないかとの指摘があった。確認したところ、常用型は2割程度で、それ以外は登録型とのことだった。冒頭にお伝えしておきたい。
労働側・小山委員 マージン率の公開は適正な派遣につながる。わからないまま働くのは労働者に不利益で、知る権利は当然にあるだろう。この場合、公開されるのは個々の労働者のマージンという解釈でよいか。
厚生労働省・鈴木課長 個々の場合と平均とがある。「○人で○万円」などの決め方をすることもある。
労働側・長谷川委員 派遣労働者への通知について、三党案のほうがわかりやすい。労働者が派遣会社を選ぶときにマージンは有力な情報になる。その他、交通費支給の有無、派遣先の社員食堂を使えるかといった福利厚生などについても情報を公開してほしい。
派遣先で労使協議をやっても、派遣労働者の情報を公開しない。派遣先の労働組合への通知も重要だ。
使用者側・秋山委員 昨年の研究会報告でも指摘されているが、派遣先労働組合への通知は、個人情報保護の観点などから問題があるのではないか。
労働側・長谷川委員 派遣先と労働者が優良な派遣会社を選ぶ上で、除法公開は重要。やるべきだ。
使用者側・高橋委員 マージンを公開することにどういう意味・効果があるのかを考慮すべき。また、個人情報保護に留意すべき。派遣先労働組合への通知については法制化するのは、労使自治の観点から問題ではないか。知ることでどのような法的効果・義務が発生するのか。
使用者側・秋山委員 社会保険に加入しないことでマージンを低くする会社が増えるのではないかという指摘が派遣会社からあった。
労働側・長谷川委員 マージンが少ないところは、それなりに努力をしているのではないか。派遣の場合、派遣先の人事部も正確に把握しておらず、労使協議に乗らないことがある。しかし、通知することで労使協議にしろといっているわけでない。
使用者側・高橋委員 通知するなということではない。どれだけの事項を通知する必要があるのかを考えるべきだ。
労働側・小山委員 平気で法令違反する会社も多い。過剰なマージンを取る会社も多く、公開することは歯止めになる。どうしたら、そこで働く人の権利を守ることができるのかを考える必要がある。
昨年から清掃業で派遣切りが行われたが、派遣先労働組合が協議事項にしようとすると、当該労使関係とは関係ないと、協議のテーブルにのせない会社も多かった。
また、派遣先が派遣労働者の退職金にしてほしいと派遣会社に支払ったお金が派遣労働者に支払われなかったこともあった。
労使自治の観点からも交渉事項は拡大していくべきだ。

7.派遣先責任の強化
使用者側・高橋委員 項目が多いので、特に問題と考える3つの事項について述べる。まず「未払い賃金に関する連帯責任」「社会保険料に関する派遣先の連帯責任」については、違法を前提にしている。このため、どうせ連帯責任だから払わなくてもよいという悪質な派遣会社がはびこることになるのではないか。また、派遣先は派遣料金として、すでに派遣労働者の賃金と社会保険料を負担している。さらに、支払いを義務づけるという規定はあまりに過酷だ。
また「団体交渉の応諾」が挙げられているが、団体交渉は雇用主と行うものだ。朝日放送事件(最高裁平成7年2月28日第三小法廷判決)を紹介していただいたが、これを超えるのは無理があるのではないか。団体交渉をしたとしても、労働条件を決定し得ない派遣先はどうしたらいいのだ。
派遣先は、派遣労働者からの苦情の申し出を受けたときに派遣元と協議をすることになっている。すでにあるこうした規定で対応できるのではないか。
労働側・長谷川委員 例えば労災は派遣先で起きるのだから、交渉事項になるだろう。最近、都道府県労働委員会に派遣労働者の団体交渉に関する事項が持ち込まれることが多く、朝日放送事件が引用されている。しかし、この事件を引用することによって、団体交渉を断られることも多いのが現状だ。労組法の改正も含めて検討が必要だ。
使用者側・秋山委員 「派遣労働者に対する安全衛生教育」「定期健康診断の代行」とあるが、これはどういういうことか。
厚生労働省・鈴木課長 実際に就労している場所である派遣先で行うことがよいのではないかとの考えのようだ。
労働側・長谷川委員 育児休業などについても、もう少し強化しても良いのではないか。
使用者側・高橋委員 列挙されていることの具体的なイメージがわかない。現在の仕組みの中で、何ができなくて何ができるかを考えるべきだ。健康診断も派遣会社が違法に行わなかった場合を前提にしており、違反を助長しかねず問題だ。

8.違法派遣への対処
使用者側・高橋委員 直接雇用みなし制度については、我が国には契約自由、採用の自由があり問題だ。悪質なケースを想定していると考えられるが、違法の判定は必要。長期的な裁判になることも考えられ、労使にとって望ましいことではない。また、労働条件をどうするかの判断が困難だ。さらに、派遣のときに有期だった契約が無期になるのは、大きな変更で非常に問題だ。
労働側・長谷川委員 なぜみなし規定を入れるのかを考えるべきだ。これまでは違法に対して無力だった。労働審判、通常訴訟は増えている。派遣労働者が民事効果をもつ法律を作ることが必要だ。この点ついて、公益・鎌田委員にも説明をしてほしい。以前から、違法に対してはみなし雇用が必要だと主張してきた。労働条件をどうするかなどは法律の作りの中で検討できる。
公益側・鎌田委員 民事効を前提とした場合、労働者に債務があることになり、派遣先に雇い入れることを求めることができる。これがうまくいかないとなると、債務不履行で損害賠償の話になる。
研究会では、直接雇用みなし制度は労働者の意志にかかわらず「みなす」ことになるので、これでいいのかは議論になった。民事効と行政勧告を組み合わせることも考えられる。
労働側・長谷川委員 違法があった場合の労働者の意思は退職の自由で担保できるのではないか。民事効と行政勧告の並立はどちらかを労働者が選ぶことができるということか。
公益側・鎌田委員 みなした上で退職すればいいということだが、例えば3カ月の契約なら3カ月間は労働者も退職ができない。
厚生労働省・鈴木課長 民事効果を規定した上で、従わなかった場合に勧告するなどとすることもできる。その際、必ずしも指導前置とするものではない。
使用者側・高橋委員 採用の自由などについては、研究会ではどのような議論になったのか。
公益側・鎌田委員 正確には覚えていないので、事務局(厚生労働省)に補足してもらえればありがたい。今は、違法の中で採用の自由を考慮することはないのではないかと考える。
厚生労働省・鈴木課長 派遣労働者は、違法を指摘することで職場を失っており、これを問題視した。いわば違法のペナルティーだ。
使用者側・高橋委員 違法を行う悪い会社に、労働契約が移転することの問題は考慮されなかったのか。
厚生労働省・鈴木課長 それも含めて労働者の意思とする。
使用者側・秋山委員 罰則で対応できるのではないか。反対だ。

9.罰則 10.法律の名称、施行時期その他の事項
公益側・清家委員 時間がなくなってきた。残されている2つについても意見があれば伺いたい。
労働側・長谷川委員 罰則を強化することでよいのではないか。名称は変更しても問題ないのではないか。
使用者側・高橋委員 罰則の対象としてあげられている事項は、直接雇用みなし制度と重複し、二重のペナルティになるのではないか。

今回で、当初挙げられていた検討事項について、一通り議論が終わった。このため、次回は、特に労使の意見の隔たりが大きかった「登録型派遣」と「製造業派遣」について、再度議論することとなった。また、これまでの労使の意見の争点を公益委員がまとめ、次回に提出することになった。
なお、次回は11月26日(木)午前9時から開催される予定。

[参考資料]⇒「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」に係る参考資料(資料2)(20091120-1.pdf 1.5MB)
[参考資料]⇒EU指令及びドイツ・フランスの均等待遇に係る規定の概要(20091120-2.pdf 432KB)

[参考リンク]
>>議事録(11月20日)(厚生労働省)

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