この日は、前回途中で終わってしまった「製造業派遣」の議論を途中から再開するという形で行われました。
なお、清家部会長が欠席。このため、鎌田委員が部会長を代理。労働側・JAMの市川委員が欠席。同じくJAMの小山委員が代理出席となりました。
2.製造業務派遣
使用者側・市川委員 その後、会員企業に対して実際に行ったヒアリングの結果をお話ししたい。前回も働き方の多様化と申し上げた。学生アルバイトや介護をしながら短時間働くような場合のワークライフバランスの達成に登録型派遣、製造業派遣は有効だ。ハローワークには短時間の求人は少ない。
総務省の労働力調査によると3年以内に正社員になった人のうち、20万人の前職が派遣労働者だ。正社員になっている派遣労働者がまったくいないという指摘はこうしたデータからも正しくない。
派遣労働者に正社員になってほしいと声をかけても断られることもある。現在の登録型派遣禁止の議論に動揺が走っているとの指摘もあった。
製造業、登録型が禁止された場合、どうなるのかを聞くと正社員の残業を増やして対応するとの指摘もあり、ワークライフバランスに逆行する。仕事をあきらめるという企業もあった。
派遣先は膨大なデータから、適切な人材を選んで派遣している。こうした機能はハローワークにはない。例えば、食品製造に清潔感に欠ける人を派遣しないなど有効に働いている。
派遣の場合、ロースキルの仕事が多い。季節的な変動も大きく、機械化ができない。こうした業務に必要な時期に、必要な人数を用意できる。
下請は1か月前にしかオーダーが来ないので、即応性が求められる。このため、コスト高になっても派遣に頼らざるを得ない。
年末に派遣切りが問題になったが、地方の派遣会社ではそんなことをすれば悪い風評が立って仕事ができなくなるといっている。
労働側・小山委員 製造業派遣については、前回も前々回も申し上げているように、会社にとって都合がよいことはわかっている。ここでは働いている労働者の立場に立って議論をしてほしい。年末の派遣切りを見れば、製造業派遣が雇用の調整弁になっていることは明らかだ。学生や主婦ではなく、生活の糧を得るために働いている人たちが大量に職を失った。
製造業への派遣を原則禁止することで誰が困るのか。2009年問題のときにはみんな決意をして直接雇用や適正な請負に変わっていった。雇用の安定を図っていくことが必要だ。
使用者側・市川委員 学生や主婦もいるということだ。請負は一定の規模がないとできず、こうした点からも中小企業いじめ法案になっている。禁止すれば、これらの人たちの雇用機会、働くチャンスを奪うことになるのではないか。おっしゃられたようなことは雇用対策で考えていくべきだ。
使用者側・秋山委員 私もヒアリングの結果をお話ししたい。前回も申し上げたが、中小企業は知名度がなく募集してもなかなか人が集まらない。募集から採用まで1か月くらいかかるので、急な受注に対応できず仕事を逃してしまう。群馬県のある金属関連の会社は製造業派遣が禁止されたら正社員の残業を増やして対応すると言っていた。現在の中小企業には正社員を増やす余力がなく、失業や倒産の増加が懸念される。仕事を探す側からも、派遣に登録しておけば、頻繁に求人情報誌を見る必要もなく、採用されるかわからないリスクが回避できる。
使用者側・高橋委員 雇い止めと言っても、漫然と契約を更新するようなことは少ない。一部、雇い止めに問題があるような表記の仕方をしているが違和感がある。しかし、一時期に大量の人が失職したことはいかんで、これをきっかけに真摯に取り組んでいく。
派遣切りの中にあって、47.7%が雇用機会を確保委する努力をしている。退寮時期の延長や就職の斡旋を行った企業もある。悪い例ばかりが強調されるが、そればかりではない。 また42.9%は派遣者が希望しなかったために雇用維持ができなかったというデータもある。
直接雇用、請負でいいのではないかと労働側の意見もあるが、景気の変動は振れが大きく、商品もライフサイクルが短くなっている。機会の損失を防ぐために最大生産量に応じた人員の配置をするために派遣は必要だ。禁止されれば、海外に出ていくという選択もされていくだろう。
日本生産労務技能協会の調査では、派遣労働者の6割が製造業派遣禁止に反対し、賛成は1割だった。またある労働組合の調査でも59%の派遣労働者が製造業派遣の禁止に反対しており、賛成は5%程度だ。
製造業への派遣が禁止された場合、新たにパートやアルバイトを採用するという企業は少ない。仕事がなくなるわけではないとの指摘もあったが、製造業への派遣禁止で必ずしも直接雇用に切り替えられていくわけではない。
昨年来の派遣切り中で何もしなかったわけではなく、指針を改正し、中途解除についても盛り込んだ。十分であるかの議論は必要だろう。
労働側・長谷川委員 今回の派遣切りで問題になった根本の原因は、間接雇用であることだ。雇用と使用が分離されているときに、どういう問題が起きるか、だ。
派遣労働者は間接雇用であるがために簡単にクビを切られた。昨年の秋に起きた問題の原因は派遣の構造にある。ひとつは、直接雇用なら適用される労働契約法や雇い止めの判例法理がきかなかったこと、もうひとつは派遣元が雇用責任を果たせなかったことだ。きちんと議論しないと、また二の舞になる。派遣労働者の雇用の安定を第一に考えるべきだ。
公益・鎌田委員 臨時・一時的な業務に対応するために便利であると主張する使用者側と雇用の安定を第一にと主張する労働側と出歩み寄りが見られない。派遣元の常用雇用であれば臨時・一時的な業務にも対応でき、雇用も安定する。労使、互譲の精神で意見をいただければと思う。
労働側・小山委員 常用型の定義が問題になる。常用型と言われても有期契約だったりする。そこで働いている人の立場に立って議論してほしい。
労働側・長谷川委員 先ほど、日本生産労務技能協会のアンケート調査を紹介していただいたが、対象の多くは常用型ではないのか。雇用主である派遣元が雇用責任を負うべきだが、派遣先はどうすべきかの議論も必要だ。また、派遣の問題は有期の問題と絡んでいる。
使用者側・高橋委員 鎌田先生からいただいた指摘はありがたい。人材サービスゼネラルユニオンのHPではこのところ格差社会を論じる際に、間接雇用である派遣がその元凶であるという意見がたびたび出てきます。私たちは、マスコミや一部の労働界、政党から出されている、派遣イコール「ワーキング・プア」、派遣イコール「不本意な働き方」という見方には強く違和感を覚えます。
組合員の話を聞き、さらに厚生労働省の調査結果をみると、こうした見方が一方的であることが浮かび上がってきます。 間接雇用であるがために「不安定である」、「かわいそう」、「ひどい働き方だ」などといわれ、信念・プライドをもって派遣労働者として働く仲間は傷ついています。職業選択の自由の下、間接雇用も直接雇用も同等に「労働」であることの評価がされるべきです。
と紹介されている。
労働者の保護、雇用の安定という面から常用雇用に寄せていくことは必要だが、無期に限定するかは議論が必要だ。
3.日雇い派遣
労働側・長谷川委員 「2か月」は注目すべき数字だ。考えてよいのではないか。禁止の例外は20年法案どおりでよいのではないか。
使用者側・市川委員 昨年十分に議論をして結論を出したので、変える必要はないと思う。
使用者側・高橋委員 解雇予告手当をもって2か月とするのは無理があるのではないか。社会保険の適用に関しても、働き方によって適用にならないこともある。もしそうなっても例外は必要だ。20年法案で30日だったものを2か月とするのであれば、当初よりも業務を拡大するなどが必要だ。
労働契約は労働契約法にあるとおり同意が原則。「見なし」には反対だ。どのような労働条件であったのか「見なす」のかも不明だ。「見なす」というのは、今までの日本の法律にはない。
公益・鎌田委員 今、「見なし」まで議論が及んだ。2か月の意味も含めて、事務局に説明してほしい。
厚生労働省・鈴木課長 2か月を超えることで健保、厚年が適用し、雇用の安定を図ることなどが目的ではないか
また、就労の実態に応じて「見なし」の内容が決まる。しかし、この条文のままでは混乱が予想される。補足が必要になるだろう。
労働側・長谷川委員 必ずしも主旨は違うが、「事業主」とみなすなど、「見なす」という考え方そのものがないわけではない。
4.専ら派遣・グループ企業派遣
公益・鎌田委員 皆さんご承知とは思うが、事前に事務局から説明をしていただきたい。
厚生労働省・鈴木課長 そもそも専ら派遣は、特定の会社の労働力の調達を目的としているため、第二人事部的な役割になってしまい、需給調整機能を果たしていない。このため、許可をしていない。許可取得後に、同様の状態になった場合、指導をしている。グループ派遣についても同様で、グループ外の需給調整機能を果たしていない。
使用者側・秋山委員 いずれの場合も定年退職者は除くと考えてよいか。
厚生労働省・鈴木課長 高齢者は特別の雇用管理を行うことから、昨年除くことで確認した。それでよいのではないか。
使用者側・高橋委員 専門性を有効に活用できる点を考えれば、グループ派遣そのものが悪ではないはずだ。三党案ではグループ以外にも広げるとしているが、資本関係のないところにまで広げるのは無理があるのではないか。企業城下町などの場合、結果として特定の企業に偏ることはあり得る。
5.均等(均衡)待遇
使用者側・高橋委員 三党案にある「就労の実態に応じて…」とはどういう意味か。
厚生労働省・鈴木課長 就労実態に応じて差が出るのは構わないが、派遣だから…ということはダメだと言うことではないか。
労働側・小山委員 就業形態による差が、身分差別になっている。
労働側・長谷川委員 派遣労働者の均等待遇について、ヨーロッパがどうなっているか、資料を用意してほしい。
使用者側・秋山委員 正社員と派遣労働者は役割が違うので、同じ仕事だから賃金も同じに…というのは無理があると思う。
使用者側・高橋委員 雇用主が違う派遣の場合は、難しいことが多い。もう少し広い立て付けの法律の中で議論をすることが適切ではないか。正社員の中でも賃金が違うことがあるので、だれと均衡を図るか。派遣より直接雇用の有期契約者のほうが時給が低いと言うことであれば、低い方に合わせるという考え方もある。就業の実態に応じた均衡がよいのではないか。
労働側・長谷川委員 今後、均等待遇は様々な場面で議論になっていく。派遣労働者の賃金を下げると言うが、派遣労働者の場合は通勤交通費を支給されていなかったり、社員食堂が利用できなかったり、福利厚生が不十分だ。こうした点も考慮すべきで、賃金の見方はひとつではない。
改正パート法で均等・均等処遇を取り入れた。パートでできたのだから、派遣でどうすればできるのかを考えていく必要がある。
使用者側・高橋委員 パートは直接雇用なので、そのまま適用できない。参考にはなるし、議論を妨げる者ではないが、短い期間に議論を尽すのは困難ではないか。
公益・鎌田委員 念のため「均等」と「均衡」についても事務局に説明してほしい。
厚生労働省・鈴木課長 「同じものを同じように」が均等、違いがあることを前提にバランスをとって決めていこうというのが「均衡」、ということだ。
労働側・小山委員 間接雇用のもっている弊害として比較がしにくくなっている。格差があるのであれば、その理由をはっきりさせていく必要があるのではないか。難しいことは理解するが格差のある実態をただしていくことを前提に議論をすべきだ。
労働側・長谷川委員 難しいことは理解するが一歩踏み込んだ議論が必要ではないか。
使用者側・市川委員 議論が戻ってしまうが、先ほど、鎌田委員から指摘があったので、製造業派遣について述べたい。三党案では、一定の専門職については製造業務への派遣を認めるとしているが、中小企業で活用している派遣はロースキルの業務なので該当せず、事実上、中小企業の製造業は派遣を受け入れられなくなってしまう。雇用を回復させるためにも、まず景気対策をしてほしい。その途中で残念ながら、漏れた人については、セーフティネットを充実させて対応していく。現在の製造業への派遣禁止は論理の飛躍で無理があるのではないか。手直しして対応できるはずだ。
また、現在、常用派遣のほうが時給が高く、常用化を進めれば時給が上がり、経費の負担も増す可能性があり反対だ。
外国においては登録型、製造業派遣が主流だとも聞いている。こうした外国との相場観から言って問題がある。
労働側・長谷川委員 外国の登録型は、無期雇用への橋渡し。今の意見を踏まえるのであれば、制定された85年までさかのぼって議論する必要がある。
使用者側・高橋委員 派遣労働者だけでなく、派遣会社の内勤社員にも影響する。この点も考慮する必要がある。
[参考資料]⇒「今後の労働者派遣制度の在り方の論点について」に係る参考資料(20091110.pdf 344KB)
[参考リンク]>>議事録(11月10日)(厚生労働省)