第23回派遣トラブルホットライン報告

生活できる仕事がほしい!

現行派遣法下で極限まで劣化した雇用

10月23日、24日の2日間、東京と大阪で開設した「派遣トラブルホットライン」には118件の相談が寄せられました。
2008年末の派遣切り以降、長引く失業から逃れるため、「どんな仕事でもいいから」と飛びついた仕事のあまりのひどさに悲鳴が上がっています。現行派遣法下においては、ますます雇用が劣化し、派遣切りが繰り返されている実態が浮き彫りになりました。
生活できる雇用を取り戻すためにも、派遣法改正は急務です。ホットラインの結果を踏まえ、継続審議となっている派遣法改正法案を今国会で成立させるよう働きかけていく予定です。

日時  2010年10月23日(土)・24日(日)午前10時~午後8時
窓口  NPO法人・派遣労働ネットワーク(東京)、派遣労働ネットワーク関西(大阪)
対応  派遣で働く方の相談を、弁護士、NPO、ユニオンの相談スタッフが受け、アドバイスまたはトラブル解決に取り組みました。

- 相 談 内 容 の 集 計 結 果 (項目別)-
2日間で受け付けた相談項目の内訳(118人/167項目)

相談内容 今回(2010年10月) 前回(2009年6月)
解雇(契約の中途解除等) 27 32
契約打ち切り・更新なし 17 21
差別・ハラスメント 16
賃金不払い 15
契約と実際が違う 11 16
雇用保険・社会保険 20
事前面接
不利益変更
労働時間・有休・時給 14
期間制限違反・直接雇用希望
個人情報
違法派遣(偽装請負・二重派遣等)
労災・安全衛生
仕事の紹介がない
生活・住宅問題 32
紹介予定派遣トラブル
退職トラブル
その他 27 12
派遣関連相談の総項目数 167 196

相談の特徴・ポイント

派遣切りから2年・・・「失業から抜け出せない」「あまりにも劣悪な雇用ばかり」
一斉に吹き荒れた「派遣切り」の嵐から2年が経過しました。たくさんの派遣切り被害者が今なお仕事に就けずにいます。
一方、長引く失業から抜け出すため、「どんな仕事でもいいから」と飛びついた仕事は、あまりに劣悪で悲鳴が上がっています。いざ仕事には就いたものの、「給与をもらえない」「またクビになった」「仕事を教えてもらえず嫌がらせがひどい」・・・など、ますます質の悪い雇用が拡大し、働いても生活できない「ワーキングプア」が増加しています。

契約の短期化・・・「クビを覚悟しないと苦情も言えない」
賃金不払いやハラスメントが増加する一方、契約期間はますます短期化しているため、どんな違法状態やハラスメントにさらされても、「クビを覚悟しないと苦情も言えない」という声が目立ちました。

正社員を求める声
劣悪な雇用が拡大しているからこそ、安定した雇用を求める声がますます高まっています。しかし、規制緩和によって原則自由化されている派遣は、安定雇用を侵食し、求職者が正社員として就職する機会を奪っています。
不安定雇用や低賃金雇用など質の悪い雇用は、質の良い雇用を侵食するだけであって、雇用の総量を増やすわけではありません。また逆に、質の悪い雇用を規制することが雇用の総量を減らすわけでもありません。
低賃金・不安定雇用を生み出している派遣制度は、早急に規制すべきです。

複合就労の矛盾
質の悪い雇用の拡大は、生活できない仕事を増やし、結果として複合就労(ダブルワーク)を拡大させています。
ダブルワークは、長時間労働を助長し、また、失業給付さえ受けられないという矛盾を生み出しています。

性別

男性 54
女性 54
不明 10
合計 118

年代別

20代 3
30代 17
40代 23
50代 10
60代 6
不明 59
合計 118

雇用形態別

派遣 (注1) 76
正社員 9
契約社員 6
請負・委託 5
アルバイト 3
パート 1
不明 9
その他 9
合計 118

(注1)派遣の内訳

事務
(うち政令指定業務)
34
(19)
製造 5
物流 4
日雇い 45
その他 11
不明 18
合計 76

派遣・偽装請負関連の相談事例

派遣切りから2年・・・劣悪な雇用しか見つからない
【相談事例1】製造派遣・50代・男性
派遣切りで仕事を失って生活保護を受けるようになった。今の派遣先で働くようになって生活保護は打ち切られたが、また派遣切りに遭った。今回の派遣の仕事も収入が少なく、貯金できなかった。お金がない。どうしたらいいか・・・

【相談事例2】製造派遣・40代・男性
仕事が見つからず、派遣でしか働けない。年収が200万円に届かず、生活が安定しない。有休もあるがなかなか使えない。

雇用の劣化~違法な働き方
【相談事例3】派遣(通訳・翻訳)・女性
二重派遣で働いている。社会保険に加入してくれない。有休も取れない。

【相談事例4】製造派遣・40代・男性
派遣先でいじめがあって辞めざるを得なくなった。生活保護を受けてその後実家に戻った。「3ヶ月未満しか働いていないので交通費は親が負担すべき」といわれ、4万円近くとられた。取り戻したい。

【相談事例5】日雇い派遣・男性
職場で「覚せい剤を打て」「自殺しろ」「働きが悪いから時給を返せ」、3時間勤務のはずなのに「8時間働け」などといわれる。

【相談事例6】事務派遣・30代・女性
女性社員の嫌がらせがひどい。研修も気が向かないと教えない。流産した人もいる。

【相談事例7】派遣(物流)30代・男性
仕事中にケガ。労災を使わせてもらえず解雇された。社会保険に入りたかった。

雇用の劣化~賃金不払い・賃金カット
【相談事例8】偽装請負・男性
勤続8年。時給が1600円(夕方)と1400円(日勤)だったが、一律1200円にされた。請負に移行したと言っているが偽装請負のようだ。

【相談事例9】請負(病院)・50代・男性
請負会社が倒産した。賃金未払いがある。

【相談事例10】派遣(検査)・40代・男性
7年ほど勤務しているが、時給が1800円から1480円に引き下げられる。

雇用の劣化~解雇が恐くて苦情を言えない
【相談事例11】請負(警備)・60代・男性
仮眠時間があるが忙しくて仮眠できない。連続で勤務すると家で2~3時間しか眠れない。苦情を言いたいが言うと契約を切られる。

【相談事例12】事務派遣・20代・女性
派遣元の担当者に派遣先でのパワハラの苦情を申し立てたら、逆に注意された。

雇用の劣化~いとも簡単に「解雇」
【相談事例13】物流派遣・60代・男性
8時間勤務と言われていたが、5時間で帰され賃金も働いた分しか支払われない。クレームをつけたら契約を打ち切られた。

【相談事例14】事務派遣・20代・女性
翻訳として派遣されたが、実際には付随業務にも該当しない仕事が多い。派遣会社にはそれを指摘すると更新はしないと言われた。

【相談事例15】事務派遣・50代・女性
9年11カ月働いていたが、解雇された。

【相談事例16】事務派遣・50代・女性
勤続15年。中途解除か雇止めの話が出ている。

【相談事例17】事務派遣・40代・女性
8年間働いていたが、勤務態度が悪いと契約を切られた。無遅刻・無欠勤で働いてきたので納得できない。

複合就労の矛盾
【相談事例18】派遣/アルバイト・40代・男性
派遣とアルバイトのダブルワーク。派遣の仕事はやめたが、アルバイトで働いているので失業保険をもらえない。アルバイトの収入だけでは生活できないが、アルバイトをやめるわけにもいかない。何とかならないか。

常用代替 正社員になりたい 期間制限違反
【相談事例19】事務派遣・女性
OA機器操作として派遣されたが、お茶出し・掃除・・・など。正社員の代わり。すでに6年働いている。

【相談事例20】事務派遣・女性
3年以上同じ派遣先で働いている。正社員になれないか。

【相談事例21】事務派遣・40代・女性
3か月の契約を更新し続け6年間働いている。実態は一般事務。正社員は年収500万円以上だが、7時間勤務で300万円程度にしかならない。直接雇用を求めたいが、求めると契約を切られそう。

【相談事例22】紹介予定派遣・30代・男性
紹介予定派遣で働いていた。様子を見て正社員にするといわれていたが、契約を切られた。

違法な「事前面接」で選別され・・・
【相談事例23】事務派遣・20代・女性
派遣の紹介を受けているが、事前面接で落とされる。①事前面接は面接が行われるまでの日程調整に手間取ること②派遣元の複数の担当者からスキルの確認がされその都度同じような話を30分くらいしなければならないこと③事前面接の前はいいことしか言わないのでその気になってしまうこと④採用の可否が決まるまで就職活動ができないこと-などからやりたくない。派遣会社に「事前面接をやらないでください」と頼みたい。

【相談事例24】事務派遣・30代・女性
派遣先の面接を受けて採用になったが、入社時期が延長されている。

産休・育休を取れない~育児・介護休業法が派遣先に適用されない矛盾
【相談事例25】事務派遣・女性
6か月更新で3年6カ月勤務。産休・育休の申請をしたところ、派遣先が契約してくれれば取れるが、ダメなら取れないと言われた。

派遣以外の相談から

【相談事例26】契約社員40代・男性
荷降ろし、配送助手の仕事に3ヶ月間従事している。入社2カ月間は「体験入社」でとして無給。3ヶ月目以降は時給713円(最賃以下)。1日16~18時間働いても6時間分しか払われない。そこから「事務所経費」「電気代」「水道代」「ガス代」「トラック燃料代」「携帯代」などが引かれ、今月の給料として渡された封筒に入っていたのは、給与明細もなく、たった「4円」だった。1日休むと7万円引かれる。

【相談事例27】職業紹介(配膳)40代・男性
紹介先が倒産して賃金が未払いになっている。

【相談事例28】正社員50代・女性
働き始めて1週間ほどで経営者からセクハラを受けた。賃金の未払いもある。

【相談事例29】パート(病院)・男性
何かない限りは更新するといわれていたが、10月の更新のときに来年3月で終了と言われた。

【相談事例30】日雇(内装)30代・男性
去年の夏頃から賃金の未払いがある。内装関係で重い物を持ち上げる仕事。ヘルメットや安全靴などの貸出の預かり金として800円取られた。返してほしい。一緒に働いている人の中には、月収20万円のはずが10万円しかもらえていない人もいる。

NPO派遣労働ネットワーク
理 事 長 中野 麻美(弁護士)
連 絡 先 渋谷区代々木4-29-4西新宿ミノシマビル2F
電話03-5354-6250

⇒ 第23回派遣トラブルホットライン報告(PDF 200KB)